microsoft/mcp-for-beginners
主な特徴
- **体系的な学習パス**: 基礎から高度な実装まで11モジュールで構成
- **マルチ言語サポート**: C#、Java、JavaScript、Python、TypeScriptの実装例
- **実践的なコード例**: 各言語での動作するサンプルコード
- **包括的なドキュメント**: 50以上の言語に自動翻訳される充実したドキュメント
- **コミュニティ駆動**: Microsoftとコミュニティによるオープンソースプロジェクト
- **最新の内容**: MCP Dev Daysなどのイベントと連動した最新情報
リポジトリ解析: microsoft/mcp-for-beginners
基本情報
- リポジトリ名: microsoft/mcp-for-beginners
- 主要言語: 多言語対応(C#, Java, JavaScript, Python, TypeScript)
- スター数: GitHub Trendingにランクイン
- フォーク数: アクティブにフォークされている
- 最終更新: 活発に更新中(MCP Dev Days 2025年7月29-30日開催予定)
- ライセンス: MIT License
- トピックス: AI, LLM, Model Context Protocol, 教育, チュートリアル, マルチ言語, オープンソース
概要
一言で言うと
Microsoftが提供する、AIモデルと外部ツール・データソースを標準化された方法で接続するためのModel Context Protocol (MCP)を学ぶ包括的な教育カリキュラムです。
詳細説明
Model Context Protocol (MCP)は、大規模言語モデル(LLM)が外部ツール、API、データソースとシームレスに相互作用できるようにするオープンな標準化インターフェースです。このカリキュラムは、MCPの基礎から実装、高度なトピックまでを体系的に学習できるよう設計されています。
MCPは、AIアプリケーションが成長し複雑になるにつれて必要となる標準化されたアーキテクチャを提供します。USBがデバイス接続を標準化したように、MCPはAIとツール/データの接続を標準化します。これにより、開発者は再利用可能で拡張可能なAIシステムを構築できます。
主な特徴
- 体系的な学習パス: 基礎から高度な実装まで11モジュールで構成
- マルチ言語サポート: C#、Java、JavaScript、Python、TypeScriptの実装例
- 実践的なコード例: 各言語での動作するサンプルコード
- 包括的なドキュメント: 50以上の言語に自動翻訳される充実したドキュメント
- コミュニティ駆動: Microsoftとコミュニティによるオープンソースプロジェクト
- 最新の内容: MCP Dev Daysなどのイベントと連動した最新情報
使用方法
インストール
前提条件
- Git(リポジトリのクローン用)
- 学習したい言語の開発環境:
- C#: .NET SDK
- Java: JDK 11以上
- JavaScript/TypeScript: Node.js 20+
- Python: Python 3.8+
- 推奨: VS Code、Visual Studio、またはお好みのIDE
インストール手順
# リポジトリをフォーク(GitHubで実行)
# その後、フォークしたリポジトリをクローン
git clone https://github.com/[your-username]/mcp-for-beginners.git
cd mcp-for-beginners
# 言語別の依存関係インストール例
# JavaScript/TypeScript
cd 03-GettingStarted/samples/javascript
npm install
# Python
cd 03-GettingStarted/samples/python
pip install -r requirements.txt
基本的な使い方
Hello World相当の例(MCPサーバーの基本)
# Python版のシンプルなMCPサーバー
from mcp.server import Server
from mcp.types import Tool
server = Server("hello-mcp")
@server.tool()
async def hello_world(name: str) -> str:
"""Say hello to someone"""
return f"Hello, {name}!"
if __name__ == "__main__":
server.run()
実践的な使用例(計算機サーバー)
// TypeScript版の計算機MCPサーバー
import { Server } from '@modelcontextprotocol/sdk/server/index.js';
import { StdioServerTransport } from '@modelcontextprotocol/sdk/server/stdio.js';
const server = new Server({
name: 'calculator-server',
version: '1.0.0',
});
server.setRequestHandler('tools/call', async (request) => {
const { name, arguments: args } = request.params;
switch (name) {
case 'add':
return { result: args.a + args.b };
case 'multiply':
return { result: args.a * args.b };
default:
throw new Error(`Unknown tool: ${name}`);
}
});
const transport = new StdioServerTransport();
server.connect(transport);
高度な使い方(リソースとツールの組み合わせ)
# 動的リソースとツールを組み合わせたMCPサーバー
from mcp.server import Server
from mcp.types import Resource, Tool
import aiohttp
server = Server("advanced-mcp")
# 動的リソースの提供
@server.resource("weather/{city}")
async def get_weather(city: str) -> Resource:
async with aiohttp.ClientSession() as session:
async with session.get(f"https://api.weather.com/{city}") as resp:
data = await resp.json()
return Resource(
uri=f"weather://{city}",
name=f"Weather in {city}",
mimeType="application/json",
text=json.dumps(data)
)
# リソースを活用するツール
@server.tool()
async def analyze_weather_trend(cities: list[str], days: int) -> dict:
"""Analyze weather trends across multiple cities"""
results = {}
for city in cities:
weather_data = await get_weather(city)
# 分析ロジック
results[city] = analyze_trend(weather_data, days)
return results
ドキュメント・リソース
公式ドキュメント
- README.md: プロジェクト全体の概要、カリキュラム構造、クイックスタートガイド
- 00-Introduction/README.md: MCPの概念と重要性を解説する入門ドキュメント
- study_guide.md: リポジトリの効果的な学習方法を示すガイド
- changelog.md: カリキュラムの更新履歴
- 各モジュールのREADME: 各学習モジュールの詳細な説明と演習
サンプル・デモ
- 03-GettingStarted/samples/[言語]: 各言語での基本的なMCPサーバー実装
- calculator: 計算機能を提供するシンプルなMCPサーバー
- 04-PracticalImplementation/samples/[言語]: より実践的な実装例
- containerapp: コンテナ化されたMCPサーバー
- 05-AdvancedTopics/: 高度なトピックの実装例
- mcp-oauth2-demo: OAuth2認証の実装
- web-search-mcp: Web検索機能の統合
- mcp-realtimestreaming: リアルタイムストリーミング
チュートリアル・ガイド
- Module 3: Getting Started - 環境構築から最初のサーバー/クライアント作成まで
- Module 4: Practical Implementation - SDK使用、デバッグ、テスト手法
- Module 5: Advanced Topics - スケーリング、セキュリティ、マルチモーダル対応
- Module 10: Hands-on Workshop - AI Toolkitを使用したMCPサーバー構築ワークショップ
- MCP Dev Days - 2025年7月29-30日開催の公式イベント
技術的詳細
アーキテクチャ
全体構造
MCPはクライアント・サーバーモデルを採用しており、以下の構成要素から成り立っています:
- MCPホスト: AIモデルを実行する環境(Claude Desktop、VS Code等)
- MCPクライアント: リクエストを開始するアプリケーション
- MCPサーバー: コンテキスト、ツール、機能を提供するサービス
- プロトコル: JSON-RPCベースの標準化された通信仕様
主要な機能:
- Resources(リソース): 静的または動的なデータの提供
- Prompts(プロンプト): ガイド付き生成のための事前定義ワークフロー
- Tools(ツール): 検索、計算などの実行可能な機能
- Sampling(サンプリング): 再帰的な相互作用によるエージェント動作
ディレクトリ構成
mcp-for-beginners/
├── 00-Introduction/ # MCPの概要と重要性
├── 01-CoreConcepts/ # コア概念の詳細解説
├── 02-Security/ # セキュリティのベストプラクティス
├── 03-GettingStarted/ # 環境構築と基本実装
│ ├── samples/ # 各言語のサンプルコード
│ │ ├── csharp/
│ │ ├── java/
│ │ ├── javascript/
│ │ ├── python/
│ │ └── typescript/
│ └── 01-first-server/ # 最初のサーバー作成ガイド
├── 04-PracticalImplementation/ # 実践的な実装技術
├── 05-AdvancedTopics/ # 高度なトピック
│ ├── mcp-oauth2-demo/ # OAuth2実装例
│ ├── mcp-scaling/ # スケーリング戦略
│ └── web-search-mcp/ # Web検索統合
├── images/ # 図表とダイアグラム
├── translations/ # 50以上の言語への翻訳
└── study_guide.md # 学習ガイド
主要コンポーネント
-
MCPサーバー: ツールとリソースを提供するコアコンポーネント
- 場所: 各
samples/[言語]/ディレクトリ - 依存: 言語固有のMCP SDK
- インターフェース:
tools/list,tools/call,resources/list,resources/read
- 場所: 各
-
MCPクライアント: サーバーと通信するクライアント実装
- 場所:
03-GettingStarted/02-client/ - 依存: MCP SDK、通信トランスポート層
- インターフェース:
initialize,callTool,readResource
- 場所:
-
トランスポート層: 通信メカニズム(stdio、SSE、WebSocket)
- 場所: SDK内に実装
- 依存: 標準I/OまたはHTTP/WebSocket
- インターフェース:
connect,send,receive
技術スタック
コア技術
- 言語:
- C# (.NET 6+): エンタープライズ向け実装
- Java (11+): JVMベースのシステム統合
- JavaScript/TypeScript (Node.js 20+): Web開発者向け
- Python (3.8+): データサイエンス・AI開発向け
- プロトコル:
- JSON-RPC 2.0: 標準化された通信プロトコル
- Server-Sent Events (SSE): リアルタイムストリーミング
- WebSocket: 双方向通信(一部実装)
- 主要ライブラリ:
- MCP SDK (各言語版): MCPプロトコルの実装
- JSON Schema: APIスキーマ定義
- 各言語固有のHTTP/非同期ライブラリ
開発・運用ツール
- ビルドツール:
- 各言語標準のツール(npm、pip、Maven、dotnet等)
- GitHub Actions: 自動ビルドとテスト
- テスト:
- 単体テスト: 各サンプルに含まれる
- 統合テスト: クライアント・サーバー間の通信テスト
- CI/CD:
- GitHub Actions: 翻訳の自動更新、コード品質チェック
- 自動リリース: タグベースのリリース管理
- デプロイ:
- コンテナ化: Dockerfileサンプル提供
- Azure Container Apps: 統合例
- ローカル実行: 開発環境での直接実行
設計パターン・手法
- クライアント・サーバーパターン: MCPの基本アーキテクチャ
- プラグインアーキテクチャ: ツールとリソースの動的登録
- 非同期処理パターン: すべての操作が非同期で実行
- レジストリパターン: ツールとリソースのカタログ管理
- デコレータパターン: ツール定義の簡潔な記述(Python/TypeScript)
- ファクトリーパターン: トランスポート層の抽象化
データフロー・処理フロー
-
初期化フェーズ:
- クライアントがサーバーに接続
- サーバーが利用可能なツール/リソースのリストを返す
- クライアントがツールカタログを保存
-
リクエスト処理:
- ユーザーが自然言語でリクエスト
- LLMがリクエストを解析し、必要なツールを特定
- クライアントがMCPサーバーにツール実行要求を送信
-
ツール実行:
- サーバーが要求されたツールを実行
- 外部API呼び出しやデータ処理を実行
- 結果をJSON形式で構造化
-
レスポンス処理:
- サーバーが実行結果をクライアントに返す
- クライアントがLLMに結果を渡す
- LLMが最終的な応答を生成
-
ストリーミング(オプション):
- SSEを使用してリアルタイムで結果を送信
- プログレッシブな応答生成
API・インターフェース
公開API
tools/list
- 目的: 利用可能なツールのリストを取得
- 使用例:
// リクエスト
{
"jsonrpc": "2.0",
"method": "tools/list",
"id": 1
}
// レスポンス
{
"jsonrpc": "2.0",
"result": {
"tools": [
{
"name": "calculate",
"description": "Perform mathematical calculations",
"inputSchema": { ... }
}
]
},
"id": 1
}
tools/call
- 目的: 特定のツールを実行
- 使用例:
// リクエスト
{
"jsonrpc": "2.0",
"method": "tools/call",
"params": {
"name": "calculate",
"arguments": {
"operation": "add",
"a": 5,
"b": 3
}
},
"id": 2
}
設定・カスタマイズ
設定ファイル
// mcp.json - MCPサーバー設定
{
"mcpServers": {
"calculator": {
"command": "node",
"args": ["./calculator-server.js"],
"env": {
"LOG_LEVEL": "debug"
}
},
"weather": {
"command": "python",
"args": ["weather_server.py"],
"env": {
"API_KEY": "${WEATHER_API_KEY}"
}
}
}
}
拡張・プラグイン開発
MCPサーバーの拡張は、標準化されたインターフェースを実装することで行います:
-
新しいツールの追加:
@server.tool()デコレータ(Python)server.setRequestHandler()(TypeScript)
-
リソースプロバイダーの実装:
- 動的または静的なデータソースの追加
- URIベースのリソースアクセス
-
カスタムトランスポートの実装:
- stdio、SSE、WebSocket以外の通信方法
-
認証・認可の統合:
- OAuth2、API Key、JWTなどの実装例あり
パフォーマンス・スケーラビリティ
パフォーマンス特性
- 低レイテンシ: JSON-RPCによる軽量な通信
- 非同期処理: すべての操作が非ブロッキング
- ストリーミング対応: SSEによる段階的な結果返却
- メモリ効率: ステートレスなサーバー設計
スケーラビリティ
- 水平スケーリング: 複数のMCPサーバーインスタンスの並列実行
- ツールの動的発見: 実行時のツール登録と発見
- 分散アーキテクチャ: 異なるサーバーが異なる機能を提供
- コンテナ化: DockerやKubernetesでの大規模デプロイ対応
- 負荷分散: 複数のサーバー間でのリクエスト分散
制限事項
- 技術的な制限:
- ステートフルな操作には追加の実装が必要
- 大容量データの転送には向かない(ストリーミング推奨)
- リアルタイム双方向通信はWebSocketトランスポートが必要
- 運用上の制限:
- 各言語SDKの成熟度に差がある
- セキュリティ設定は実装者の責任
- 標準化されたエラーハンドリングの実装が必要
評価・所感
技術的評価
強み
- 標準化されたプロトコル: AIとツールの接続を統一的に扱える
- 言語非依存: 複数の主要言語で実装可能
- 包括的な教育リソース: 初心者から上級者まで対応する充実したカリキュラム
- 実践的なサンプル: すぐに動作する実装例が豊富
- Microsoftのサポート: 大手企業による継続的な開発とサポート
- 活発なコミュニティ: オープンソースで透明性の高い開発
改善の余地
- プロトコルの成熟度: まだ発展途上で仕様変更の可能性
- エコシステムの規模: 利用可能なMCPサーバーがまだ限定的
- デバッグツール: 開発者向けのデバッグ・監視ツールが不足
- パフォーマンス最適化: 大規模システムでの最適化事例が少ない
向いている用途
- AIエージェントシステム: 複数のツールを組み合わせた自律的なAIシステム
- エンタープライズ統合: 既存の企業システムとLLMの連携
- 開発ツール: IDE、コーディングアシスタントへの統合
- データ分析パイプライン: 動的なデータソースとAIの連携
- 教育・学習: MCPとAI統合の概念を学ぶ教材として
向いていない用途
- リアルタイムゲーム: 低レイテンシが要求される用途
- 組み込みシステム: リソース制約の厳しい環境
- 単純なチャットボット: MCPの利点を活かせない単純な対話システム
- 完全にオフラインの環境: LLMとの連携が前提のため
総評
mcp-for-beginnersは、AI時代の新しい標準となる可能性を秘めたModel Context Protocolを学ぶための優れた教育リソースです。Microsoftが主導することで、品質の高いドキュメントと実装例が提供されており、開発者が実践的にMCPを学び、実装できる環境が整っています。
特に注目すべきは、このプロトコルが解決しようとしている問題の重要性です。AIアプリケーションが複雑化する中で、標準化された方法でツールやデータソースと接続できることは、開発効率とシステムの保守性を大幅に向上させます。
カリキュラムは体系的で、基礎概念から実践的な実装、さらには高度なトピックまでカバーしており、段階的に学習できる構成になっています。複数の言語でのサンプル実装も、異なるバックグラウンドを持つ開発者にとって非常に有用です。
ただし、MCPはまだ発展途上の技術であり、プロトコル自体の進化と共にこのカリキュラムも更新されていくことが予想されます。早期採用者として、コミュニティに参加し、フィードバックを提供することで、この標準の発展に貢献できる機会でもあります。
総じて、AIとツールの統合を標準化したい開発者、将来のAIシステムアーキテクチャを学びたいエンジニア、そして次世代のAIアプリケーションを構築したい組織にとって、このリポジトリは必須の学習リソースと言えるでしょう。