tldr-pages/tldr
主な特徴
- **実例中心のドキュメント**: 各ページは5〜8個の具体的な使用例で構成
- **多言語対応**: 40以上の言語に翻訳されたページを提供
- **複数のクライアント実装**: Python、Rust、Node.jsなど多様なクライアントが利用可能
- **オフライン対応**: PDFバージョンやPWA対応のWebクライアントを提供
- **シンプルなMarkdown形式**: 誰でも簡単に貢献できる構造
- **活発なコミュニティ**: 多数のコントリビューターによる継続的な更新
- **標準化されたフォーマット**: 一貫性のある読みやすい形式
リポジトリ解析: tldr-pages/tldr
基本情報
- リポジトリ名: tldr-pages/tldr
- 主要言語: Markdown
- スター数: 57,279
- フォーク数: 4,606
- 最終更新: アクティブに更新中
- ライセンス: Creative Commons Attribution 4.0 International License (CC-BY)
- トピックス: man-pages, cheatsheets, command-line-tools, documentation, collaborative, community-driven, tldr
概要
一言で言うと
コマンドラインツールの使い方を簡潔な実例で示すコミュニティ主導のドキュメントプロジェクト。従来のmanページをより実用的でアクセスしやすくした代替ドキュメント。
詳細説明
tldr-pagesプロジェクトは、コマンドラインツールのためのコミュニティが管理するヘルプページ集です。従来のmanページの詳細で技術的な説明に対して、より簡潔で実用的なアプローチを提供することを目的としています。
例えば、man tarの最初のオプション説明が「-b blocksize: Specify the block size, in 512-byte records, for tape drive I/O...」という技術的な内容から始まるのに対し、tldrでは「ファイルをアーカイブする」「圧縮アーカイブを作成する」といった実際の使用例から始まります。
対応プラットフォームはUNIX、Linux、macOS、FreeBSD、NetBSD、OpenBSD、SunOS、Android、Windows、Cisco IOSと幅広く、各プラットフォーム固有のコマンドも含まれています。
主な特徴
- 実例中心のドキュメント: 各ページは5〜8個の具体的な使用例で構成
- 多言語対応: 40以上の言語に翻訳されたページを提供
- 複数のクライアント実装: Python、Rust、Node.jsなど多様なクライアントが利用可能
- オフライン対応: PDFバージョンやPWA対応のWebクライアントを提供
- シンプルなMarkdown形式: 誰でも簡単に貢献できる構造
- 活発なコミュニティ: 多数のコントリビューターによる継続的な更新
- 標準化されたフォーマット: 一貫性のある読みやすい形式
使用方法
インストール
前提条件
- Python 3.7以上(Pythonクライアントの場合)
- Node.js(Node.jsクライアントの場合)
- Rust/Cargo(Rustクライアントの場合)
インストール手順
# 方法1: Pythonクライアント(公式推奨)
pip3 install tldr
# 方法2: Rustクライアント(Linux/Mac向け)
brew install tlrc # Homebrew経由
# または
cargo install tlrc # Cargo経由
# 方法3: Node.jsクライアント
npm install -g tldr
# Webブラウザ版(インストール不要)
# https://tldr.inbrowser.app にアクセス
基本的な使い方
Hello World相当の例
# tarコマンドの使い方を表示
tldr tar
# gitコマンドの使い方を表示
tldr git
# 特定のサブコマンドの使い方を表示
tldr git checkout
実践的な使用例
# macOS固有のコマンドを表示
tldr --platform osx caffeinate
# ページをリスト表示
tldr --list
# オフラインキャッシュを更新
tldr --update
# 特定の言語でページを表示(日本語の例)
tldr --language ja tar
高度な使い方
# ショートオプションのみを表示
tldr --short-options tar
# ロングオプションのみを表示
tldr --long-options tar
# 複数の単語を含むコマンド名(自動的にハイフンで連結)
tldr git status # git-statusとして検索される
# 大文字小文字を含むコマンド名(自動的に小文字化)
tldr eyeD3 # eyed3として検索される
ドキュメント・リソース
公式ドキュメント
- README.md: プロジェクトの概要とクイックスタートガイド
- CONTRIBUTING.md: 貢献ガイドラインとページ作成の基本ルール
- CLIENT-SPECIFICATION.md: クライアント実装のための詳細な仕様書
- contributing-guides/style-guide.md: ページ作成の詳細なスタイルガイド
- Wiki: https://github.com/tldr-pages/tldr/wiki - クライアント一覧など追加情報
サンプル・デモ
- pages/common/: 汎用的なコマンドのページ例(tar、git、docker等)
- pages/linux/: Linux固有のコマンド例(apt、yum、systemctl等)
- pages/osx/: macOS固有のコマンド例(brew、caffeinate等)
- Webクライアント: https://tldr.inbrowser.app - オンラインデモ
チュートリアル・ガイド
- ページ作成ガイド: contributing-guides/style-guide.md
- 翻訳テンプレート: contributing-guides/translation-templates/
- コミュニティチャット: Matrix (#tldr-pages:matrix.org)
- 翻訳進捗状況: https://lukwebsforge.github.io/tldri18n/
技術的詳細
アーキテクチャ
全体構造
tldr-pagesは、シンプルなディレクトリベースの構造を採用しています。各コマンドは独立したMarkdownファイルとして保存され、プラットフォームごとにディレクトリが分かれています。クライアントはこれらのファイルをローカルにキャッシュし、必要に応じて表示します。
ディレクトリ構成
tldr/
├── pages/ # 英語版ページ(デフォルト)
│ ├── common/ # プラットフォーム共通コマンド
│ ├── linux/ # Linux固有コマンド
│ ├── osx/ # macOS固有コマンド
│ ├── windows/ # Windows固有コマンド
│ ├── android/ # Android固有コマンド
│ └── ... # その他のプラットフォーム
├── pages.<locale>/ # 翻訳版ページ(例: pages.ja/)
│ └── [同じ構造] # プラットフォームディレクトリ
├── scripts/ # ビルド・テストスクリプト
├── contributing-guides/# 貢献者向けガイド
└── images/ # プロジェクト関連画像
主要コンポーネント
-
ページファイル: 各コマンドの説明とサンプル
- 場所:
pages/[platform]/[command].md - 形式: 標準化されたMarkdown
- 内容: 説明文と5-8個の実例
- 場所:
-
インデックスシステム: ページの検索と管理
- 場所:
scripts/build-index.js - 出力:
index.json - 用途: クライアントの高速検索
- 場所:
-
検証システム: ページの品質保証
- tldr-lint: ページ形式の検証
- markdownlint: Markdown構文の検証
- テストスクリプト: 全体的な整合性チェック
技術スタック
コア技術
- 言語:
- Markdown: ページ記述言語
- JavaScript/Node.js: ビルドスクリプトとツール
- Python/Rust/その他: 各種クライアント実装
- フォーマット: 標準化されたMarkdownテンプレート
- 主要ライブラリ:
- markdownlint-cli (^0.45.0): Markdown構文検証
- tldr-lint (^0.0.19): tldr固有のフォーマット検証
- glob (11.0.3): ファイルパターンマッチング
- husky (^9.1.7): Gitフック管理
開発・運用ツール
- ビルドツール:
- npm scripts: タスクランナー
- build-index.js: インデックス生成
- テスト:
- scripts/test.sh: 統合テストスクリプト
- PR自動チェック: CI/CDでの品質保証
- CI/CD:
- GitHub Actions: 自動テストとビルド
- 自動デプロイ: ページ更新の自動化
- 配布方法:
- GitHubリリース: PDFバージョン
- npmレジストリ: Node.jsクライアント
- PyPI: Pythonクライアント
設計パターン・手法
- シンプルさ優先: 複雑さよりも理解しやすさを重視
- 実例駆動: 理論的説明より実践的な使用例
- 段階的複雑性: 簡単な例から徐々に高度な例へ
- プラットフォーム分離: 共通機能と固有機能の明確な区別
- 国際化対応: 言語別ディレクトリによる翻訳管理
データフロー・処理フロー
- ユーザー入力:
tldr [options] command-name - コマンド解析: オプションとコマンド名の抽出
- プラットフォーム判定: 現在のOSまたは指定プラットフォーム
- 言語選択: システムロケールまたは指定言語
- ページ検索:
- キャッシュから検索
- プラットフォーム固有→common→他プラットフォームの順
- ページ取得:
- ローカルキャッシュから読み込み
- キャッシュがない場合はダウンロード
- レンダリング: Markdownを端末用にフォーマット
- 表示: 色付けや装飾を含む出力
API・インターフェース
公開API
CLIENT-SPECIFICATION v2.3
- 目的: クライアント実装の標準化
- 必須オプション:
# バージョン表示
tldr -v / --version
# プラットフォーム指定
tldr -p common tar / --platform common tar
# キャッシュ更新(キャッシュ対応時)
tldr -u / --update
- オプショナル機能:
# ページ一覧表示
tldr -l / --list
# 言語指定
tldr -L ja tar / --language ja tar
# オプション形式フィルタ
tldr --short-options tar
tldr --long-options tar
設定・カスタマイズ
ページ形式仕様
# command-name
> Short, snappy description.
> Preferably one line; two are acceptable if necessary.
> More information: <https://url-to-upstream.tld>.
- Example description:
`command --option`
- Example description:
`command {{placeholder}} {{another_placeholder}}`
拡張・プラグイン開発
- 新規クライアント開発: CLIENT-SPECIFICATION.mdに準拠
- 新規ページ追加: CONTRIBUTING.mdのガイドラインに従う
- 翻訳貢献: pages.
/ディレクトリに追加 - カスタムツール: scripts/ディレクトリのツールを参考に開発
パフォーマンス・スケーラビリティ
パフォーマンス特性
- 高速検索: ローカルキャッシュによる即座のアクセス
- 小さなフットプリント: 各ページは数KB程度
- 効率的な更新: 差分更新による帯域幅の節約
- 最適化手法:
- インデックスファイルによる高速検索
- プラットフォーム別の分離による不要データの削減
- 圧縮配布(PDF版)
スケーラビリティ
- 水平拡張: 新規言語・プラットフォームの追加が容易
- 分散管理: GitHubによる世界規模の配信
- コミュニティスケール: 多数のコントリビューターによる並行作業
- クライアント多様性: 用途に応じた実装選択
制限事項
- ページあたり最大8個の例に制限
- オフライン時は事前にキャッシュされたページのみ利用可能
- 画像やグラフィックスは含まれない(テキストのみ)
- インタラクティブな要素は提供されない
評価・所感
技術的評価
強み
- アクセシビリティ: 初心者にも理解しやすい実例中心のアプローチ
- メンテナビリティ: シンプルなMarkdown形式による容易な更新
- 国際化: 40以上の言語への翻訳による広範なリーチ
- エコシステム: 多様なクライアント実装による柔軟な利用方法
- 標準化: 明確な仕様による一貫性の確保
改善の余地
- インタラクティブな学習機能の欠如
- 高度な使用例やトラブルシューティング情報の不足
- 動的なコンテンツ(アニメーション、図解)のサポート不足
- バージョン固有の情報管理の仕組みが未整備
向いている用途
- コマンドラインツールのクイックリファレンス
- 初心者のコマンドライン学習
- 日常的によく使うコマンドの構文確認
- 新しいツールの基本的な使い方の習得
- チーム内でのコマンド使用方法の標準化
向いていない用途
- 詳細な技術仕様やパラメータの確認(manページが適切)
- プログラミングAPIのリファレンス
- GUIアプリケーションのドキュメント
- 複雑なトラブルシューティング
総評
tldr-pagesは、従来のmanページが持つ「詳細すぎて実用的でない」という問題を見事に解決したプロジェクトです。「Too Long; Didn't Read」という名前が示す通り、必要最小限の情報で最大限の実用性を提供することに成功しています。
特筆すべきは、5万以上のスターを獲得し、世界中のコミュニティによって支えられている点です。これは、このプロジェクトが解決する問題の普遍性と、そのソリューションの有効性を証明しています。
シンプルさを追求した設計により、誰でも簡単に貢献でき、多言語展開も実現しています。また、クライアント仕様の標準化により、様々な環境やワークフローに統合できる柔軟性も備えています。
今後の展望としては、より高度な検索機能やコンテキスト認識機能、AIを活用した例の自動生成などが期待されますが、現状でも十分に実用的で価値のあるツールとして確立されています。