maybe-finance/maybe

⭐ 51,728 🍴 3,811 Ruby📄 GNU Affero General Public License v3.0 GitHubで見る →

主な特徴

**完全な財務管理機能**: 銀行口座、クレジットカード、投資、不動産、ローン、暗号資産などの管理
**リアルタイム同期**: Plaid統合による銀行口座の自動同期
**AIチャット機能**: OpenAIを使用した財務アドバイザー機能
**自動カテゴリ分類**: トランザクションの自動分類とルール設定
**予算管理**: カテゴリ別の予算設定と追跡
**投資ポートフォリオ管理**: 株式、投資信託、暗号資産のパフォーマンス追跡
**マルチカレンシー対応**: Synth APIを使用した為替レート変換
**セルフホスト可能**: Docker Composeを使用した簡単なセットアップ

リポジトリ解析: maybe-finance/maybe

基本情報

リポジトリ名: maybe-finance/maybe
主要言語: Ruby
スター数: 51,728
フォーク数: 3,811
最終更新: アクティブに開発中
ライセンス: GNU Affero General Public License v3.0
トピックス: personal-finance, wealth-management, fintech, open-source, rails, hotwire

概要

一言で言うと

完全機能を備えたオープンソースの個人財務管理アプリケーションで、元は$1,000,000をかけて開発された商用プロダクトが現在セルフホスト可能な形で提供されている。

詳細説明

Maybeは2021/2022年に開発された個人財務および財産管理アプリケーションで、当初はサブスクリプションベースのビジネスとしてCFP/CFAが直接アドバイスを提供する「Ask an Advisor」機能も含んでいました。ビジネスとしては2023年中ごろに閉鎖しましたが、現在は完全にオープンソースプロジェクトとして復活し、ユーザーが自分でホストして無料で使用できるようになりました。

主な特徴

完全な財務管理機能: 銀行口座、クレジットカード、投資、不動産、ローン、暗号資産などの管理
リアルタイム同期: Plaid統合による銀行口座の自動同期
AIチャット機能: OpenAIを使用した財務アドバイザー機能
自動カテゴリ分類: トランザクションの自動分類とルール設定
予算管理: カテゴリ別の予算設定と追跡
投資ポートフォリオ管理: 株式、投資信託、暗号資産のパフォーマンス追跡
マルチカレンシー対応: Synth APIを使用した為替レート変換
セルフホスト可能: Docker Composeを使用した簡単なセットアップ

使用方法

インストール

前提条件

セルフホスト (Docker):

Docker Engine
Docker Compose

開発環境:

Ruby (ファイル.ruby-versionで指定されたバージョン)
PostgreSQL 9.3以上
Redis
Node.js（JavaScriptランタイム用）

インストール手順

# 方法1: Dockerでセルフホスト
# 1. ディレクトリ作成
mkdir -p ~/docker-apps/maybe
cd ~/docker-apps/maybe

# 2. Docker Composeファイル取得
curl -o compose.yml https://raw.githubusercontent.com/maybe-finance/maybe/main/compose.example.yml

# 3. 環境設定（オプション）
touch .env
# SECRET_KEY_BASEとPOSTGRES_PASSWORDを設定

# 4. アプリ起動
docker compose up -d

# 方法2: ローカル開発環境
git clone https://github.com/maybe-finance/maybe.git
cd maybe
cp .env.local.example .env.local
bin/setup
bin/dev

# オプション: デモデータをロード
rake demo_data:default

基本的な使い方

Hello World相当の例

ブラウザで http://localhost:3000 にアクセス
デフォルト認証情報でログイン:
- Email: user@maybe.local
- Password: password
ダッシュボードで財務サマリーを確認

実践的な使用例

銀行口座の接続
- 「Connect Account」をクリック
- Plaidを使用して銀行口座を接続
- トランザクションが自動で同期
予算の設定
- 「Budgets」セクションへ移動
- カテゴリ別に月次予算を設定
- 実際の支出と比較
投資ポートフォリオの管理
- 「Investments」アカウントを作成
- 保有銘柄を追加
- パフォーマンスを自動追跡

高度な使い方

AIチャット機能の活用
- OpenAI APIキーを設定
- チャットで財務アドバイスを取得
```
OPENAI_ACCESS_TOKEN=your-api-key
```
自動ルールの設定
- 特定の商品名を含むトランザクションを自動カテゴリ分類
- 特定の金額以上の取引にタグ付け
マルチカレンシー設定
- Synth APIキーを設定
- 複数通貨での資産管理

ドキュメント・リソース

公式ドキュメント

README.md: プロジェクトの背景、概要、セットアップ手順
CLAUDE.md: 非常に詳細な開発ガイドライン、アーキテクチャ、コード規約
CONTRIBUTING.md: コントリビューションガイド
docs/hosting/docker.md: Dockerを使用したセルフホストの詳細ガイド
Wiki: https://github.com/maybe-finance/maybe/wiki (各OS別の開発セットアップガイド)

サンプル・デモ

rake demo_data:default: デモデータ生成コマンド
Lookbook (/lookbook): コンポーネント開発用のビジュアルプレビュー
compose.example.yml: Docker Composeセットアップのサンプル

チュートリアル・ガイド

GitHub Wiki: Mac/Linux/Windows別の詳細セットアップガイド
Discordコミュニティ: https://link.maybe.co/discord
GitHub Discussions: 質問やトラブルシューティング

技術的詳細

アーキテクチャ

全体構造

Ruby on Rails 7.2ベースのモノリシックアプリケーションで、Hotwire（Turbo + Stimulus）を使用してリアクティブなUIを実現。バックグラウンドジョブにSidekiq、データベースにPostgreSQL、キャッシュとジョブキューにRedisを使用。

ディレクトリ構成

maybe/
├── app/                  # Railsアプリケーションコード
│   ├── controllers/      # APIとWebコントローラー
│   ├── models/           # ActiveRecordモデル（ビジネスロジック含む）
│   ├── views/            # ERBテンプレート
│   ├── components/       # ViewComponent（UIコンポーネント）
│   ├── javascript/       # Stimulusコントローラー
│   ├── jobs/             # バックグラウンドジョブ
│   └── assets/           # CSS、画像、フォント
├── config/               # Rails設定
├── db/                   # データベースマイグレーション
├── test/                 # Minitestテスト
├── bin/                  # 実行スクリプト
└── docs/                 # ドキュメント

主要コンポーネント

Accountモデル: 各種金融アカウントの基底クラス
- 場所: app/models/account.rb
- 依存: Accountable, Syncable, Balance
- インターフェース: sync, balance_series, current_balance
PlaidItem: Plaid接続管理
- 場所: app/models/plaid_item.rb
- 依存: Provider::Plaid, PlaidAccount
- インターフェース: sync, webhook_update
Assistant: AIチャット機能
- 場所: app/models/assistant.rb
- 依存: Provider::OpenAI
- インターフェース: create_response, available_functions

技術スタック

コア技術

言語: Ruby (.ruby-versionで指定)
フレームワーク: Rails 7.2.2 (Hotwireスタックをフル活用)
主要ライブラリ:
- Turbo-Rails: SPA風のインタラクション
- Stimulus-Rails: JavaScriptフレームワーク
- ViewComponent: 再利用可能なUIコンポーネント
- Sidekiq + Sidekiq-Cron: バックグラウンドジョブ
- Doorkeeper: OAuth2認証
- Plaid: 銀行口座接続
- Tailwind CSS: スタイリング
- D3.js: データビジュアライゼーション

開発・運用ツール

ビルドツール:
- Propshaft: アセットパイプライン
- Importmap: JavaScriptモジュール管理
- bin/dev: Procfileベースの開発サーバー
テスト:
- Minitest: Rails標準テスト
- Fixtures: テストデータ
- VCR: 外部APIテスト
CI/CD: GitHub Actions（計画中）
デプロイ:
- Docker + Docker Compose
- ghcr.ioからの公式イメージ

設計パターン・手法

Skinny Controllers, Fat Models: ビジネスロジックはモデルに集中
Concerns: 共通機能のモジュール化（Accountable, Syncable等）
ViewComponent: UIロジックのカプセル化
Hotwire-First: JavaScriptを最小限に、サーバーサイドレンダリング優先
Query Objects: 複雑なクエリロジックのカプセル化
State Machines: AASMを使用した状態管理

データフロー・処理フロー

銀行口座同期
- Plaidを通じてアカウント情報を取得
- SyncJobでバックグラウンド処理
- トランザクションと残高を更新
- 自動カテゴリ分類とルール適用
投資ポートフォリオ管理
- Securityモデルで証券情報管理
- Synth APIで価格情報取得
- Holdingでポジション追跡
- ポートフォリオパフォーマンス計算
AIチャット処理
- ユーザーメッセージを受信
- AssistantResponseJobで非同期処理
- OpenAI APIで応答生成
- Function Callingでデータアクセス

API・インターフェース

公開API

/api/v1/* エンドポイント

目的: サードパーティアプリケーション向けREST API
認証: OAuth2 (Doorkeeper) または APIキー + JWT
使用例:

# OAuthトークン取得
curl -X POST https://maybe.app/oauth/token \
  -d "grant_type=client_credentials" \
  -d "client_id=YOUR_CLIENT_ID" \
  -d "client_secret=YOUR_CLIENT_SECRET"

# APIアクセス
curl -H "Authorization: Bearer YOUR_TOKEN" \
  https://maybe.app/api/v1/accounts

設定・カスタマイズ

設定ファイル

# .envファイル
# アプリケーションモード
SELF_HOSTED=true          # セルフホストモード

# データベース設定
DB_HOST=localhost
DB_PORT=5432
POSTGRES_USER=maybe_user
POSTGRES_PASSWORD=password

# Redis設定
REDIS_URL=redis://localhost:6379/1

# セキュリティ
SECRET_KEY_BASE=your-secret-key

# 外部APIキー（オプション）
PLAID_CLIENT_ID=your-plaid-id
PLAID_SECRET=your-plaid-secret
OPENAI_ACCESS_TOKEN=your-openai-key
SYNTH_API_KEY=your-synth-key

拡張・プラグイン開発

新しいProviderの追加:
1. app/models/provider/に新しいプロバイダークラス作成
2. Provider::Registryに登録
3. 必要なインターフェースを実装
新しいアカウントタイプ:
1. Accountクラスを継承
2. Accountable concernをinclude
3. 必要なビューとコントローラーを追加

パフォーマンス・スケーラビリティ

パフォーマンス特性

Skylightによるパフォーマンスモニタリング: https://oss.skylight.io/app/applications/XDpPIXEX52oi/recent/6h/endpoints
Turbo Framesによる部分更新でページ全体の再描画を最小化
データベースクエリのincludes/joinsでN+1問題を回避
バックグラウンドジョブで重い処理を非同期化

スケーラビリティ

水平スケーリング: Docker Composeで複数インスタンスを簡単に起動
垂直スケーリング: PostgreSQL、Redisのスペック向上で対応
バックグラウンドジョブ: Sidekiqのワーカー数調整でスケール

制限事項

技術的な制限:
- Plaid APIのレート制限（プランによる）
- リアルタイムデータ同期はPlaid対応金融機関のみ
- 暗号資産の価格情報は限定的
運用上の制限:
- セルフホスト時はバックアップ、セキュリティ設定がユーザー責任
- EU外のユーザーのみ対応（Plaidの制限）
- AI機能はOpenAI APIキーが必要（追加コスト）

評価・所感

技術的評価

強み

完成度の高い機能セット: $1Mをかけた開発の成果が無料で利用可能
モダンなRailsアーキテクチャ: Hotwireをフル活用したSPA風UI
優れた開発ドキュメント: CLAUDE.mdに詳細な開発ガイドライン
セルフホスト容易性: Docker Composeで簡単に起動
リアルタイム同期: Plaidを使用した自動口座同期

改善の余地

テストカバレッジ: 現状ではテストが限定的
国際化対応: i18nはフォールバックモードで動作
モバイル対応: レスポンシブデザインだが専用アプリはなし
マルチテナント: 現状ではシングルテナント設計

向いている用途

個人・家族の財務管理: 包括的な財務管理が可能
フリーランサー・小規模事業者: 複数収入源の管理に最適
投資家: ポートフォリオ管理とパフォーマンス追跡
データプライバシー重視ユーザー: セルフホストで完全なコントロール

向いていない用途

企業会計: 個人財務に特化、会計機能は限定的
EU圏内ユーザー: PlaidがEU未対応
簡易的な家計簿: 機能が高度すぎる可能性
エンタープライズ: マルチテナントや監査機能が不足

総評

Maybeは非常に完成度の高い個人財務管理アプリケーションで、商用プロダクトとして開発されただけあって機能が充実しています。オープンソース化により、プライバシーを重視するユーザーがセルフホストで使用できる点が大きな魅力です。技術的にはRailsのベストプラクティスに従っており、コード品質も高いです。コミュニティが活発で、今後の発展が期待できるプロジェクトです。