googleapis/genai-toolbox
主な特徴
- **簡素化された開発**: 10行以内のコードでエージェントにツールを統合、複数のエージェントやフレームワーク間でツールを再利用
- **優れたパフォーマンス**: 接続プーリング、認証などのベストプラクティスを実装
- **強化されたセキュリティ**: 統合認証による安全なデータアクセス
- **エンドツーエンドオブザーバビリティ**: OpenTelemetryサポートによるメトリクスとトレーシング
- **幅広いデータベースサポート**: 14種類以上のデータベースをサポート
- **MCP互換**: Model Context Protocolに準拠し、IDEやAIツールとの統合が容易
- **複数SDK提供**: Go、JavaScript、Python SDKを提供
リポジトリ解析: googleapis/genai-toolbox
基本情報
- リポジトリ名: googleapis/genai-toolbox
- 主要言語: Go
- スター数: 6,013
- フォーク数: 455
- 最終更新: ベータ版で活発に更新中
- ライセンス: Apache License 2.0
- トピックス: MCP (Model Context Protocol)、データベース、AIツール、Gen AI、オブザーバビリティ
概要
一言で言うと
MCP Toolbox for Databasesは、AIエージェントが様々なデータベースにアクセスできるようにするオープンソースのMCPサーバーで、接続プーリング、認証、オブザーバビリティなどの複雑な問題を処理します。
詳細説明
MCP Toolbox for Databases(旧名: Gen AI Toolbox for Databases)は、Googleが開発したAIエージェント向けのデータベースアクセスソリューションです。このツールは、Model Context Protocol (MCP)をサポートし、AIアプリケーションが複数のデータベースシステムと安全かつ効率的にやり取りできるようにします。
アプリケーションのオーケストレーションフレームワークとデータベースの間に位置し、ツールの管理、配布、実行を担うコントロールプレーンを提供します。これにより、ツールの中央集権管理、エージェント間でのツール共有、アプリケーションの再デプロイなしでのツール更新が可能になります。
主な特徴
- 簡素化された開発: 10行以内のコードでエージェントにツールを統合、複数のエージェントやフレームワーク間でツールを再利用
- 優れたパフォーマンス: 接続プーリング、認証などのベストプラクティスを実装
- 強化されたセキュリティ: 統合認証による安全なデータアクセス
- エンドツーエンドオブザーバビリティ: OpenTelemetryサポートによるメトリクスとトレーシング
- 幅広いデータベースサポート: 14種類以上のデータベースをサポート
- MCP互換: Model Context Protocolに準拠し、IDEやAIツールとの統合が容易
- 複数SDK提供: Go、JavaScript、Python SDKを提供
使用方法
インストール
前提条件
- Go 1.23.8以上(ソースからビルドする場合)
- データベースへのアクセス権
- オプション: Docker(コンテナ実行の場合)
インストール手順
# 方法1: バイナリダウンロード
export VERSION=0.9.0
curl -O https://storage.googleapis.com/genai-toolbox/v$VERSION/linux/amd64/toolbox
chmod +x toolbox
# 方法2: コンテナイメージ
export VERSION=0.9.0
docker pull us-central1-docker.pkg.dev/database-toolbox/toolbox/toolbox:$VERSION
# 方法3: ソースからビルド
go install github.com/googleapis/genai-toolbox@v0.9.0
基本的な使い方
Hello World相当の例
# tools.yaml - 基本的な設定ファイル
sources:
- id: mydb
name: My Database
type: postgres
connectionString: "postgresql://user:pass@localhost:5432/mydb"
tools:
- id: sql-query
name: SQL Query Tool
source: mydb
type: postgres-sql
# サーバーの起動
./toolbox --config tools.yaml
# デフォルトでポート5000で起動
実践的な使用例
// Go SDKを使用したエージェントの統合
package main
import (
"github.com/googleapis/genai-toolbox/client/go"
)
func main() {
// Toolboxクライアントの初期化
client := toolbox.NewClient("http://localhost:5000")
// SQLクエリの実行
result, err := client.InvokeTool("sql-query", map[string]any{
"query": "SELECT * FROM users WHERE created_at > '2024-01-01'",
})
// 結果の処理
if err != nil {
log.Fatal(err)
}
fmt.Printf("Query result: %v\n", result)
}
高度な使い方
# 複数データベースと認証を使用した設定
sources:
- id: cloud-sql-pg
name: Cloud SQL PostgreSQL
type: cloud-sql-postgres
databaseName: production_db
instanceName: my-project:us-central1:my-instance
auth:
type: google-iam
- id: bigquery
name: BigQuery Analytics
type: bigquery
projectId: my-analytics-project
datasetId: sales_data
auth:
type: google-oauth
toolsets:
- id: analytics-tools
name: Analytics Toolset
tools:
- type: bigquery-execute-sql
source: bigquery
- type: postgres-execute-sql
source: cloud-sql-pg
# MCPサーバーとしての設定
mcp:
transport:
- stdio
- sse
version: 2025-01-05
# Python SDKを使用したAIエージェントの実装
from genai_toolbox import ToolboxClient
from langchain.agents import Tool
client = ToolboxClient("http://localhost:5000")
# LangChainとの統合
def query_database(query: str) -> str:
"""Execute SQL query on the database"""
result = client.invoke_tool("sql-query", {"query": query})
return str(result.data)
tools = [
Tool(
name="DatabaseQuery",
func=query_database,
description="Execute SQL queries on the database"
)
]
# AIエージェントで使用
agent = initialize_agent(tools, llm, agent="zero-shot-react-description")
agent.run("How many orders were completed last month?")
ドキュメント・リソース
公式ドキュメント
- README.md: プロジェクト概要、基本的なセットアップ手順
- DEVELOPER.md: 開発環境のセットアップ、テスト方法
- 公式サイト: https://googleapis.github.io/genai-toolbox/ - 包括的なドキュメント
- Discord: https://discord.gg/Dmm69peqjh - コミュニティサポート
サンプル・デモ
- internal/prebuiltconfigs/tools/: 各データベース用の事前構成ファイル
- MCP統合例: IDEとの接続方法のデモ
- マルチデータベース例: 複数のデータソースを統合する例
チュートリアル・ガイド
- Getting Startedガイド(公式サイト)
- IDE接続ガイド(MCPを使用したAIアシスタント統合)
- デプロイメントガイド(Cloud Run、Kubernetes、Docker Compose)
- SDKリファレンス(Go、JavaScript、Python)
技術的詳細
アーキテクチャ
全体構造
Toolboxはアプリケーションのオーケストレーションフレームワークとデータベースの間に位置するコントロールプレーンです。レイヤードアーキテクチャを採用し、ソース(データベース接続)、ツール(操作の定義)、サーバー(APIとMCPエンドポイント)の3つの主要コンポーネントで構成されています。
ディレクトリ構成
genai-toolbox/
├── cmd/ # CLIコマンドの実装
├── internal/ # 内部パッケージ
│ ├── auth/ # 認証・許可モジュール
│ ├── sources/ # データベースドライバー実装
│ ├── tools/ # ツール実装
│ ├── server/ # HTTP/MCPサーバー
│ └── telemetry/ # オブザーバビリティ
├── docs/ # ドキュメント
├── tests/ # 統合テスト
└── sdks/ # 各言語SDK
主要コンポーネント
-
Sources: データベース接続の抽象化層
- 場所:
internal/sources/ - 依存: 各データベースクライアントライブラリ
- インターフェース: 統一されたソースインターフェース
- 場所:
-
Tools: データベース操作の実装
- 場所:
internal/tools/ - 依存: Sourcesモジュール
- インターフェース:
Execute(),Validate()メソッド
- 場所:
-
Server: APIとMCPエンドポイント
- 場所:
internal/server/ - 依存: Tools、Sources、Authモジュール
- インターフェース: REST API、MCP(stdio/SSE)
- 場所:
技術スタック
コア技術
- 言語: Go 1.23.8 / 1.24.5 (toolchain)
- Webフレームワーク: chi/v5 - 軽量で高速なHTTPルーター
- 主要ライブラリ:
- データベースドライバー: pgx/v5 (PostgreSQL), go-sql-driver/mysql, redis/go-redis
- Google Cloud: alloydbconn, cloudsqlconn, bigquery, spanner
- オブザーバビリティ: OpenTelemetry SDK
- 設定: goccy/go-yaml, spf13/cobra
- バリデーション: go-playground/validator
開発・運用ツール
- ビルドツール: Go Modules、Make(オプション)
- テスト:
- 単体テスト: go test
- 統合テスト: Cloud Build(Google認証が必要な場合)
- Lint: golangci-lint
- CI/CD: GitHub Actions、Google Cloud Build
- デプロイ: Docker、Cloud Run、Kubernetes対応
設計パターン・手法
- プラグインアーキテクチャ: ツールとソースの動的登録
- ファクトリパターン: ソースタイプごとのファクトリ
- アダプターパターン: 異なるデータベースAPIの統一インターフェース化
- レジストリパターン: ツールの中央管理と検索
- オブザーバーパターン: OpenTelemetryを使用した監視
データフロー・処理フロー
- リクエスト受信: HTTP/MCPエンドポイントでリクエストを受け取る
- 認証・許可: Google IAM、OAuth、APIキーなどで認証
- ツール解決: リクエストされたツールIDから実装を取得
- ソース接続: コネクションプールからデータベース接続を取得
- ツール実行: パラメータをバリデートしてツールを実行
- 結果フォーマット: JSONで結果をフォーマット
- レスポンス返却: クライアントに結果を返す
API・インターフェース
公開API
REST API - /v1/tools/{toolId}/invoke
- 目的: ツールの実行
- 使用例:
curl -X POST http://localhost:5000/v1/tools/sql-query/invoke \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"params": {
"query": "SELECT * FROM users LIMIT 10"
}
}'
MCPインターフェース
- 目的: Model Context ProtocolによるAIツール統合
- stdioとSSEトランスポートをサポート
- 使用例:
// MCPリクエスト
{
"jsonrpc": "2.0",
"method": "tools/call",
"params": {
"name": "sql-query",
"arguments": {
"query": "SELECT COUNT(*) FROM orders"
}
},
"id": 1
}
設定・カスタマイズ
設定ファイル
# tools.yaml - 主要設定項目
sources:
- id: mydb
type: postgres # サポート: postgres, mysql, bigquery, spanner等
connectionString: "..."
auth:
type: google-iam # オプション: google-iam, google-oauth, password
tools:
- id: custom-query
source: mydb
type: postgres-execute-sql
parameters:
allowedTables: ["users", "orders"] # アクセス制限
# サーバー設定
server:
port: 5000
telemetry:
enabled: true
exporter: google-cloud # またはotlp
拡張・プラグイン開発
新しいツールの追加:
internal/tools/にツール実装を作成Toolインターフェースを実装init()関数でツールを登録
type MyTool struct{}
func (t *MyTool) Execute(ctx context.Context, params map[string]any) (any, error) {
// ツールのロジック
}
func init() {
tools.Register("my-tool", &MyTool{})
}
パフォーマンス・スケーラビリティ
パフォーマンス特性
- 接続プーリング: データベース接続の再利用によるレイテンシ削減
- 非同期処理: Goのゴルーチンを活用した並行処理
- メモリ効率: ストリーミング処理による大量データの効率的な処理
- キャッシュ: ツール定義と設定のメモリキャッシュ
スケーラビリティ
- 水平スケーリング: 複数インスタンスでの負荷分散
- マルチテナント: 設定ファイルで複数のデータソースを管理
- Cloud Run/Kubernetes: コンテナ環境でのオートスケーリング
- オブザーバビリティ: ボトルネックの特定と最適化
制限事項
- 技術的な制限:
- ベータ版のため、破壊的変更の可能性
- MCPプロトコルの一部機能が未実装
- データベース固有の機能制限
- 運用上の制限:
- データベース認証情報の管理が必要
- ネットワークアクセスの設定が必要
- 大量の同時接続時のリソース管理
評価・所感
技術的評価
強み
- 幅広いデータベースサポート: 14種類以上の主要データベースに対応
- MCP標準準拠: AIツールとの標準的な統合方法を提供
- セキュリティ重視: Google IAM、OAuthなど企業グレードの認証
- オブザーバビリティ: OpenTelemetryを活用した充実した監視
- エンタープライズ対応: Cloud Run、Kubernetesデプロイメントサポート
- 開発者体験: シンプルなYAML設定とクリアなAPI
改善の余地
- ベータステータス: v1.0まで破壊的変更の可能性
- ドキュメント分散: SDKドキュメントが未整備
- エラーハンドリング: データベース固有エラーの統一的な処理
- テストカバレッジ: 統合テストの拡充
向いている用途
- AIエージェントのデータアクセス: LLMアプリケーションのデータベース統合
- IDE統合: MCP経由でのAIアシスタント機能
- マルチデータベースアプリケーション: 複数のデータソースを統合
- エンタープライズGen AI: 企業内データへの安全なアクセス
- ラピッドプロトタイピング: AIツールの迅速な開発とテスト
向いていない用途
- リアルタイムトランザクション: 高頻度・低レイテンシ要求
- 小規模アプリケーション: オーバーヘッドが大きい
- スタンドアロンDBクライアント: 直接アクセスの方が効率的
- 非構造化データ処理: 主にSQLベースのツール
総評
MCP Toolbox for Databasesは、AIエージェントとデータベースをつなぐ重要なブリッジとして位置づけられる優れたソリューションです。Googleが開発していることから、特にGoogle Cloudプラットフォームとの統合が強力で、エンタープライズ環境での使用に適しています。
MCPプロトコルへの対応により、IDEやAIツールとの統合が容易になり、開発者の生産性向上に大きく貢献する可能性を持っています。特に「プレーン英語でクエリを実行」「データベース管理の自動化」「コンテキストを理解したコード生成」といった機能は、開発ワークフローを変革するポテンシャルを秘めています。
現在ベータ版であることが懸念点ですが、活発な開発とコミュニティサポートを考慮すると、今後の成熟が期待できます。エンタープライズGen AIアプリケーションの開発において、検討すべき重要なツールと言えるでしょう。