gusmanb/logicanalyzer

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主な特徴

  • 24チャンネル同時サンプリング
  • 最大100Msps(通常モード)/ 400Msps(ブラストモード)
  • 5V、3.3V、1.8V信号レベル対応(外部VREF可能)
  • USBおよびWiFi(Pico W)接続対応
  • 200個以上のSigrokプロトコルデコーダー統合
  • トリガー機能(シンプル、複雑、高速、外部)
  • Windows、macOS、Linux対応のクロスプラットフォームソフトウェア
  • ターミナルキャプチャアプリケーション(CLI操作)
  • マルチデバイス同期キャプチャ対応
  • 完全オープンソース(ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア)

リポジトリ解析: gusmanb/logicanalyzer

基本情報

  • リポジトリ名: gusmanb/logicanalyzer
  • 主要言語: C# / C
  • スター数: 1,892
  • フォーク数: 不明(README内未記載)
  • 最終更新: 2024年2月(Release 6.0)
  • ライセンス: GPLv3(LESSERライセンス含む)
  • トピックス: Logic Analyzer, Raspberry Pi Pico, Hardware, Embedded Systems, Digital Signal Analysis, Test Equipment, .NET, Avalonia, Protocol Decoders

概要

一言で言うと

Raspberry Pi Picoをベースとした、24チャンネル・100Mspsのオープンソースロジックアナライザープロジェクト。

詳細説明

このプロジェクトは、Raspberry Pi PicoとシンプルなレベルシフターICを使用して、プロフェッショナルグレードのロジックアナライザーを構築するものです。最小限のコンポーネントで高性能なデジタル信号解析を実現し、高価な商用製品に代わる手頃な価格のソリューションを提供します。

プロジェクトは以下の3つの主要コンポーネントで構成されています:

  1. ハードウェア: PCBデザイン、レベルシフター回路、3Dプリント可能な筐体
  2. ファームウェア: Raspberry Pi Pico用の高速サンプリングファームウェア
  3. ソフトウェア: .NET/Avaloniaベースのクロスプラットフォーム解析アプリケーション

Release 6.0では、Pico2のサポート、Sigrokプロトコルデコーダーの完全統合、ブラストモードでの400Ms/sサンプリングなど、大幅な機能強化が行われています。

主な特徴

  • 24チャンネル同時サンプリング
  • 最大100Msps(通常モード)/ 400Msps(ブラストモード)
  • 5V、3.3V、1.8V信号レベル対応(外部VREF可能)
  • USBおよびWiFi(Pico W)接続対応
  • 200個以上のSigrokプロトコルデコーダー統合
  • トリガー機能(シンプル、複雑、高速、外部)
  • Windows、macOS、Linux対応のクロスプラットフォームソフトウェア
  • ターミナルキャプチャアプリケーション(CLI操作)
  • マルチデバイス同期キャプチャ対応
  • 完全オープンソース(ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア)

使用方法

インストール

前提条件

ハードウェア:

  • Raspberry Pi Pico または Pico W(Pico 2も対応)
  • TXU0102、TXU0104、またはTXS0108レベルシフターIC
  • 基本的な電子部品(抵抗、コンデンサー等)
  • PCB製造またはブレッドボード実装

ソフトウェア:

  • .NET 8.0 Runtime
  • USB CDC-ACMドライバー(Windows 10以降は自動)
  • Python 3.x(プロトコルデコーダー用)

インストール手順

# 方法1: プリビルドバイナリの使用(推奨)
# 1. GitHubリリースページから最新版をダウンロード
# https://github.com/gusmanb/logicanalyzer/releases

# 2. ファームウェアをPicoに書き込み
# BOOTSELボタンを押しながらUSB接続し、.uf2ファイルをコピー

# 3. ソフトウェアを解凍して実行
# Windows: LogicAnalyzer.exe
# Linux/macOS: dotnet LogicAnalyzer.dll

# 方法2: ソースからビルド
# ファームウェアのビルド
cd Firmware/LogicAnalyzer
mkdir build && cd build
cmake ..
make -j4

# ソフトウェアのビルド
cd Software/LogicAnalyzer
dotnet build -c Release

基本的な使い方

Hello World相当の例

# 最小限の信号キャプチャ(ターミナルコマンド)
# 1. デバイスを接続
# 2. ソフトウェアを起動してポートを確認
# 3. 簡単なキャプチャ実行

# CLCaptureを使用した基本キャプチャ
CLCapture COM3 1000000 2000 0,1,2,3
# COM3: シリアルポート
# 1000000: 1MHzサンプリング
# 2000: 2000サンプル
# 0,1,2,3: チャンネル0-3を使用

実践的な使用例

# I2C信号の解析例
# 1. I2Cバスにチャンネル0(SDA)とチャンネル1(SCL)を接続
# 2. TerminalCaptureで設定ファイルを作成
TerminalCapture --create i2c_capture.json

# 3. 設定内容(例):
# - サンプリングレート: 10MHz
# - チャンネル: 0,1
# - トリガー: チャンネル1立ち下がりエッジ
# - プリトリガー: 10%

# 4. キャプチャ実行
TerminalCapture --capture i2c_capture.json

# 5. GUIアプリケーションで結果を開き、I2Cデコーダーを適用

高度な使い方

// C# APIを使用したプログラム制御の例
using SharedDriver;
using System;

// アナライザーに接続
var driver = new LogicAnalyzerDriver("COM3"); // またはTCP: "192.168.1.100:5000"

// キャプチャ設定
var captureConfig = new CaptureRequest
{
    Frequency = 10_000_000, // 10MHz
    PreSamples = 1000,
    PostSamples = 9000,
    Channels = new[] { 0, 1, 2, 3, 7, 8 }, // 使用チャンネル
    TriggerType = TriggerType.Complex,
    TriggerChannel = 0,
    TriggerInverted = false,
    TriggerPattern = "0b00110011" // 複雑トリガーパターン
};

// 非同期キャプチャ実行
driver.CaptureCompleted += (s, e) => 
{
    Console.WriteLine($"Capture completed: {e.Samples.Length} samples");
    // データ処理...
};

await driver.StartCaptureAsync(captureConfig);

// マルチデバイス同期キャプチャ
var multiDriver = new MultiAnalyzerDriver(new[] { "COM3", "COM4" });
await multiDriver.StartSynchronizedCapture(captureConfig);

ドキュメント・リソース

公式ドキュメント

  • README.md: プロジェクト概要、最新リリース情報、注文方法
  • Wiki artwork/: UIとキャプチャ設定のビジュアルガイド
  • 公式サイト: https://logicanalyzer.rf.gd (注文管理)
  • GitHub Wiki: 使用方法、設定ガイド、プロトコル解析チュートリアル

サンプル・デモ

  • Schematic1.jpg/Schematic2.jpg: 回路図の詳細
  • PCB1.jpg/PCB2.jpg: PCBレイアウトと実装例
  • Software1-3.jpg: ソフトウェアUI使用例
  • WiFi-1-6.jpg: WiFi設定と使用のステップバイステップガイド
  • SoftwareWindows/Linux/Raspberry.jpg: 各OS上での動作例

チュートリアル・ガイド

  • YouTubeビデオ:ZX Spectrum解析例 by Happy Little Diodes
  • Discussionセクション:コミュニティサポートとFAQ
  • Sigrokプロトコルデコーダードキュメント
  • PCBWayプロジェクトページ:製造ガイド付き

技術的詳細

アーキテクチャ

全体構造

LogicAnalyzerは3層アーキテクチャで構成されています:

  1. ハードウェア層: Raspberry Pi PicoのPIO(Programmable I/O)を使用した高速サンプリング
  2. ファームウェア層: リアルタイムデータ取得とUSB/WiFi通信
  3. ソフトウェア層: データ可視化、プロトコルデコード、ユーザーインターフェース

データフローは、GPIOピン → レベルシフター → PIO → DMA → USB/WiFi → PC → 解析ソフトウェアという経路を辿ります。

ディレクトリ構成

logicanalyzer/
├── Electronics/          # ハードウェア設計ファイル
│   ├── LogicAnalyzer/   # メインPCB(KiCAD)
│   ├── LevelShifter/    # レベルシフター回路
│   └── LogicAnalyzer_JasonYANG170/ # コミュニティ版PCB
├── Enclosure/           # 3Dプリント筐体デザイン
│   ├── *.STL            # 3Dプリントファイル
│   └── *.SLDPRT         # SolidWorksソース
├── Firmware/            # Picoファームウェア
│   ├── LogicAnalyzer/   # 標準版ファームウェア
│   └── LogicAnalyzer_V2/ # 高速版ファームウェア
├── Software/            # PC解析ソフトウェア
│   ├── LogicAnalyzer/   # メインGUIアプリ(Avalonia)
│   ├── CLCapture/       # コマンドラインキャプチャ
│   ├── TerminalCapture/ # ターミナル設定アプリ
│   └── SharedDriver/    # 共通ドライバーライブラリ
└── decoders/            # Sigrokプロトコルデコーダー

主要コンポーネント

  • PIOサンプリングエンジン: 高速データ取得の中核

    • 場所: Firmware/LogicAnalyzer/LogicAnalyzer.pio
    • 依存: Raspberry Pi Pico SDK
    • 機能: 最大400Mspsでのパラレルサンプリング
  • LogicAnalyzerDriver: ハードウェア通信層

    • 場所: Software/SharedDriver/LogicAnalyzerDriver.cs
    • 依存: System.IO.Ports, System.Net.Sockets
    • インターフェース: StartCapture, StopCapture, ConfigureTrigger
  • SigrokDecoderBridge: プロトコル解析エンジン

    • 場所: Software/LogicAnalyzer/SigrokDecoderBridge/
    • 依存: Python.NET, libsigrokdecode
    • 機能: 200+プロトコルのリアルタイムデコード

技術スタック

コア技術

  • 言語:
    • C (Pico SDK 2.0): ファームウェア開発、PIO制御
    • C# (.NET 8.0): デスクトップアプリケーション
    • Python 3.x: Sigrokデコーダー統合
  • フレームワーク:
    • Avalonia UI 11.2.3: クロスプラットフォームGUI
    • Raspberry Pi Pico SDK: 組み込み開発
  • 主要ライブラリ:
    • AvaloniaEdit (11.1.0): コードエディター機能
    • Python.NET (3.0.5): Python統合
    • MessageBox.Avalonia (3.1.6): ダイアログ表示
    • Newtonsoft.Json (13.0.3): 設定ファイル管理
    • Microsoft.CodeAnalysis.CSharp (4.12.0): 動的コード解析

開発・運用ツール

  • ビルドツール:
    • CMake: ファームウェアビルド管理
    • .NET CLI: アプリケーションビルド
    • PowerShell: 自動パブリッシュスクリプト
  • テスト:
    • ハードウェアループバックテスト
    • プロトコルデコーダー検証スイート
  • CI/CD:
    • GitHub Actions: 自動ビルドとリリース
    • 手動検証プロセス(ハードウェア依存)
  • デプロイ:
    • GitHub Releases: バイナリ配布
    • 自己完結型実行ファイル(.NET PublishTrimmed)

設計パターン・手法

  • イベント駆動アーキテクチャ: 非同期キャプチャとリアルタイム表示
  • ストラテジーパターン: 複数のアナライザードライバー(Serial/Network/Emulated)
  • オブザーバーパターン: キャプチャ完了通知とUI更新
  • ファクトリーパターン: プロトコルデコーダーの動的生成
  • PIOステートマシン: ハードウェアレベルでの効率的なサンプリング

データフロー・処理フロー

  1. 信号入力:

    • 外部信号 → レベルシフター(電圧変換)→ GPIO入力
  2. 高速サンプリング:

    • PIOステートマシンが設定周波数でGPIOを読み取り
    • DMAが自動的にメモリへ転送(CPU介入なし)
  3. データ転送:

    • トリガー条件成立 → キャプチャ停止
    • USB CDC-ACMまたはTCP/IPでPCへ転送
    • データ圧縮(RLE)オプション
  4. 解析・表示:

    • バイナリデータのデシリアライズ
    • 波形レンダリング(SkiaSharp)
    • プロトコルデコーダー適用
    • ズーム・パン・測定機能
  5. エクスポート:

    • CSV、VCD、独自フォーマット
    • スクリーンショット機能

API・インターフェース

公開API

LogicAnalyzerDriver API

  • 目的: ハードウェアとの通信・制御
  • 使用例:
// デバイス接続と基本設定
var driver = new LogicAnalyzerDriver("COM3"); // またはTCP接続: "192.168.1.100:5000"

// デバイス情報取得
Console.WriteLine($"Channels: {driver.ChannelCount}");
Console.WriteLine($"Max Frequency: {driver.MaxFrequency}Hz");
Console.WriteLine($"Buffer Size: {driver.BufferSize} samples");

// 非同期キャプチャ
await driver.StartCaptureAsync(request);

Protocol Decoder API

  • 目的: カスタムプロトコルデコーダーの追加
  • 使用例:
# Sigrok形式のカスタムデコーダー
import sigrokdecode as srd

class Decoder(srd.Decoder):
    api_version = 3
    id = 'my_protocol'
    name = 'My Protocol'
    longname = 'My Custom Protocol'
    desc = 'Custom protocol decoder'
    license = 'gplv2+'
    inputs = ['logic']
    outputs = ['my_protocol']
    
    def decode(self):
        # デコードロジック
        pass

設定・カスタマイズ

設定ファイル

# AppConfig.json - アプリケーション設定
{
    "Theme": "Dark",
    "AutoConnect": true,
    "DefaultSampleRate": 10000000,
    "DefaultChannels": [0, 1, 2, 3],
    "NetworkTimeout": 5000,
    "EnableAutoUpdate": true,
    "DecoderPaths": [
        "./decoders",
        "/usr/share/sigrok-decoders"
    ]
}

拡張・プラグイン開発

  • カスタムデコーダー: Sigrok互換Python形式でデコーダー追加可能
  • ドライバー拡張: AnalyzerDriverBase継承で新規ハードウェア対応
  • UI拡張: Avalonia UserControlsで新規パネル追加
  • エクスポート形式: IExporter実装で新規出力形式対応

パフォーマンス・スケーラビリティ

パフォーマンス特性

  • ベンチマーク結果:
    • 最大サンプリングレート: 100Msps(24ch同時)
    • ブラストモード: 400Msps(制限チャンネル)
    • USB転送速度: 最大10MB/s
    • リアルタイムレンダリング: 60fps(1M samples表示時)
  • 最適化手法:
    • PIO使用による専用ハードウェアサンプリング
    • DMAチェーンによるCPU非介入転送
    • SkiaSharpによるGPUアクセラレーション描画
    • 遅延評価とビューポートカリング

スケーラビリティ

  • マルチデバイス同期: 最大8台まで同期キャプチャ可能
  • 大容量データ処理: ストリーミング方式で数GB規模のキャプチャ対応
  • 分散処理: ネットワーク経由でのリモートキャプチャとデータ集約
  • メモリ効率: 圧縮アルゴリズムとサンプル間引きで長時間記録

制限事項

  • 技術的な制限:
    • Pico内蔵メモリ: 最大256KB(約2M samples)
    • 帯域幅: 200MHz以上の信号は歪む可能性
    • トリガー遅延: 最小100ns
    • WiFi使用時: 転送速度低下(最大1MB/s)
  • 運用上の制限:
    • 入力電圧: 最大5.5V(レベルシフター依存)
    • 温度範囲: 0-70℃(商用部品規格)
    • 連続使用: 高速サンプリング時は発熱に注意
    • USB給電: 500mA以下で動作

評価・所感

技術的評価

強み

  • 非常に優れたコストパフォーマンス($25程度で24ch・100Msps)
  • 完全なオープンソース(ハード・ファーム・ソフト全て公開)
  • Sigrokデコーダー統合による豊富なプロトコル対応
  • クロスプラットフォーム対応のモダンなUI
  • アクティブな開発とコミュニティサポート
  • WiFi対応によるワイヤレス測定可能
  • 3D印刷可能な筐体設計付き

改善の余地

  • 高周波数(>100MHz)での精度低下
  • メモリ容量による長時間記録の制限
  • アナログトリガー機能の欠如
  • 差動信号測定の未対応
  • キャリブレーション機能の不足

向いている用途

  • 組み込みシステムのデバッグ(UART、SPI、I2C等)
  • デジタル回路の教育・学習用途
  • プロトコル解析とリバースエンジニアリング
  • IoTデバイスの開発・検証
  • 趣味の電子工作プロジェクト
  • フィールドでの簡易測定(WiFi版)

向いていない用途

  • 高速差動信号(USB3.0、PCIe等)の解析
  • アナログ波形の詳細観測
  • 厳密なタイミング検証が必要な用途
  • 産業用途での24時間連続運用
  • EMC/EMI適合性試験

総評

gusmanb/logicanalyzerは、手頃な価格で本格的なロジック解析機能を提供する優れたオープンソースプロジェクトです。Raspberry Pi Picoの能力を最大限に活用し、商用製品に匹敵する機能を実現しています。

特筆すべきは、ハードウェアからソフトウェアまで全てがオープンソースで提供されている点です。これにより、ユーザーは自由にカスタマイズや改良を行うことができ、教育目的にも最適です。Sigrokプロトコルデコーダーの統合により、200以上のプロトコルに対応している点も大きな強みです。

Release 6.0では、Pico2対応や400Mspsブラストモードなど、ハードウェアの限界に挑戦する機能が追加されました。また、PCBWayでの製造サービスも開始され、はんだ付けが苦手なユーザーでも入手しやすくなりました。

商用のロジックアナライザーと比較すると、メモリ容量や最高周波数では劣りますが、一般的な組み込み開発やホビー用途には十分な性能を持っています。総じて、コストパフォーマンスと機能性のバランスが非常に優れた、エンジニアリングコミュニティへの素晴らしい貢献と言えるでしょう。