GraphiteEditor/Graphite
主な特徴
- レイヤーとノードのハイブリッド編集システム
- ベクターとラスターの統合サポート(スケーラブルラスターレンダリング)
- Grapheneノードグラフエンジンによる手続き型グラフィックスパイプライン
- WebAssemblyによるブラウザベースのエディタ(将来的にネイティブアプリも計画)
- 非破壊的編集ワークフロー
- GPUアクセラレーションとマルチコア対応の設計
リポジトリ解析: GraphiteEditor/Graphite
基本情報
- リポジトリ名: GraphiteEditor/Graphite
- 主要言語: Rust
- スター数: 17,402
- フォーク数: 757
- 最終更新: 2025年7月時点で活発に開発中(Alpha 4)
- ライセンス: Apache License 2.0
- トピックス: graphics-editor, vector-graphics, procedural-editing, rust, wasm, node-graph
概要
一言で言うと
Rustで書かれた次世代の2Dグラフィックスエディタ。レイヤーベースとノードベースのハイブリッド編集により、ベクターとラスター両方に対応する包括的なコンテンツ作成ツール。
詳細説明
Graphiteは、100%コミュニティによって構築・資金提供されているオープンソースプロジェクトです。従来のレイヤーベースの編集と、映画業界で使用されているVFXコンポジットプログラムの非破壊的アプローチ、3D業界で日常的に使用されている手続き型制作ツールの無限の創造的可能性を組み合わせています。ベクターエディタとして始まったGraphiteは、ゲームエンジンのように構築された汎用的なグラフィックスツールボックスへと進化を続けています。
主な特徴
- レイヤーとノードのハイブリッド編集システム
- ベクターとラスターの統合サポート(スケーラブルラスターレンダリング)
- Grapheneノードグラフエンジンによる手続き型グラフィックスパイプライン
- WebAssemblyによるブラウザベースのエディタ(将来的にネイティブアプリも計画)
- 非破壊的編集ワークフロー
- GPUアクセラレーションとマルチコア対応の設計
使用方法
インストール
前提条件
- Node.js(最新のLTSバージョン)
- Rust(最新の安定版リリース)
- Git(最新版)
インストール手順
# 方法1: リポジトリをクローンして開発環境を構築
git clone https://github.com/GraphiteEditor/Graphite.git
cd Graphite
# 開発用の依存関係をインストール
cargo install cargo-watch
cargo install wasm-pack
cargo install -f wasm-bindgen-cli@0.2.100
# npmパッケージをインストール
npm install
基本的な使い方
Hello World相当の例
# 開発サーバーを起動(http://localhost:8080でアクセス可能)
npm start
# ブラウザでGraphiteエディタが開き、以下の操作が可能:
# 1. ベクターツールで図形を描画
# 2. レイヤーパネルで構造を管理
# 3. ノードグラフビューに切り替えて手続き型編集
実践的な使用例
Graphiteエディタでの基本的なワークフロー:
- ベクター図形の作成: ペンツール、長方形ツール、楕円ツールなどを使用
- レイヤー管理: フォルダ構造でアートワークを整理
- ノードグラフ編集: ボタン一つでノードビューに切り替え、手続き型効果を適用
- 非破壊的編集: すべての操作は元に戻すことができ、パラメータは後から調整可能
高度な使い方
- カスタムノードの作成: Rustコードを書いて独自のノードを実装
- プロシージャルパターン: ノードグラフを使用して複雑なパターンやアニメーションを生成
- GPU計算: rust-gpuを使用してGPUシェーダーをRustで記述
ドキュメント・リソース
公式ドキュメント
- README.md: プロジェクトの概要とビジョン
- website/content/learn/: 学習用チュートリアルとドキュメント
- website/content/volunteer/guide/: 開発者向けコントリビューションガイド
- editor/: エディタコアのビジネスロジック
サンプル・デモ
- demo-artwork/: 8つのサンプルGraphiteファイル
- changing-seasons.graphite: 季節の変化を表現
- isometric-fountain.graphite: アイソメトリック噴水
- marbled-mandelbrot.graphite: マンデルブロフラクタル
- procedural-string-lights.graphite: 手続き型ストリングライト
チュートリアル・ガイド
- YouTubeチュートリアルシリーズ(ビデオ1公開済み、シリーズ継続中)
- コードベース概要のワークショップビデオ
- 開発環境セットアップガイド
技術的詳細
アーキテクチャ
全体構造
Graphiteは主要な3つのコンポーネントから構成されています:
- フロントエンド: TypeScript/Svelteによるウェブインターフェース
- エディタ: Rustで書かれたビジネスロジックコア(WebAssemblyにコンパイル)
- Graphene: ノードグラフエンジン
ディレクトリ構成
Graphite/
├── editor/ # エディタコアのビジネスロジック
├── frontend/ # ウェブインターフェース
│ ├── src/ # Svelte/TypeScriptソース
│ ├── wasm/ # WebAssemblyラッパー
│ └── public/ # 静的アセット
├── node-graph/ # Grapheneエンジン
│ ├── gcore/ # コアノードとタイプ
│ ├── graph-craft/ # グラフコンパイラ
│ └── interpreted-executor/ # 実行エンジン
├── libraries/ # 共有ライブラリ
│ ├── bezier-rs/ # ベジェ曲線操作
│ └── path-bool/ # パスのブール演算
└── website/ # ドキュメントサイト
主要コンポーネント
-
メッセージシステム: 階層的なメッセージハンドラによる通信
- 場所:
editor/src/messages/
- 依存: Rustの所有権システムを活用した安全な状態管理
- インターフェース: enumベースのメッセージパッシング
- 場所:
-
Grapheneノードシステム:
- 場所:
node-graph/
- 依存: Rust関数をノードとして使用
- インターフェース: ビジュアルプログラミング環境
- 場所:
技術スタック
コア技術
- 言語: Rust (最新安定版、Rust 2024エディション)
- フレームワーク:
- wgpu: ポータブルグラフィックスAPI
- Vello: GPUアクセラレーテッドベクターレンダラー
- winit: クロスプラットフォームウィンドウ管理
- 主要ライブラリ:
- bezier-rs: カスタムベジェ曲線ライブラリ
- kurbo (0.11.0): 2D曲線と図形
- glam (0.29): 数学ライブラリ
- wasm-bindgen (0.2.100): WebAssemblyバインディング
開発・運用ツール
- ビルドツール:
- cargo-watch: ファイル監視と自動リビルド
- wasm-pack: WebAssemblyパッケージング
- Vite: フロントエンドバンドラー
- テスト: criterionとiai-callgrindによるベンチマーク
- CI/CD: GitHub Actions
- デプロイ: GitHub Pages(エディタ)、将来的にTauriデスクトップアプリ
設計パターン・手法
- メッセージ駆動アーキテクチャ
- Entity-Component-System (ECS)的なノードグラフ設計
- Zero-cost abstractionsを活用したRustの最適化
- WebAssemblyとネイティブコードの共有実装
データフロー・処理フロー
- ユーザー入力 → フロントエンド(TypeScript/Svelte)
- WASMバインディング経由でエディタバックエンドへ
- メッセージシステムで処理を振り分け
- Grapheneノードグラフでドキュメントを計算・レンダリング
- 結果をフロントエンドに返してCanvas/SVGで表示
API・インターフェース
公開API
ノードAPI
- 目的: カスタムノードの作成と統合
- 使用例:
#[node_macro::node(category("Raster"))]
fn blur(
#[default(5.0)] radius: f64,
image: ImageFrame<Color>,
) -> ImageFrame<Color> {
// ブラー処理の実装
}
設定・カスタマイズ
設定ファイル
プロジェクトレベルの設定はCargo.tomlとpackage.jsonで管理
拡張・プラグイン開発
ノードマクロシステムを使用してカスタムノードを作成可能
パフォーマンス・スケーラビリティ
パフォーマンス特性
- WebAssembly最適化: thin LTOとリリースビルドの最適化
- GPU計算: wgpuによる並列処理
- インクリメンタルレンダリング: 変更部分のみ再計算
スケーラビリティ
- マルチコアCPU対応設計
- 将来的にネットワーク/クラウド分散レンダリング対応予定
- 大規模ドキュメントのための遅延評価
制限事項
- 現在はWebブラウザベース(ネイティブアプリは開発中)
- ラスター編集機能は実験的段階
- GPUサポートはプラットフォームに依存
評価・所感
技術的評価
強み
- Rustによる高性能で安全な実装
- 革新的なハイブリッド編集アプローチ
- 完全にオープンソースで透明性の高い開発
- 将来を見据えたアーキテクチャ設計
- アクティブなコミュニティとDiscordサポート
改善の余地
- まだアルファ版で機能が限定的
- 学習曲線が高い(特にノードグラフ)
- ネイティブデスクトップアプリが未実装
向いている用途
- ベクターアートとグラフィックデザイン
- 手続き型グラフィックスの生成
- 技術的なイラストレーション
- 実験的なビジュアルアート制作
- 教育・学習目的(オープンソースの利点)
向いていない用途
- プロダクション環境での商用利用(アルファ版のため)
- 高度な写真編集(ラスター機能が限定的)
- 印刷業務(CMYKサポートなし)
総評
Graphiteは野心的なプロジェクトで、2D グラフィックス編集の未来を再定義しようとしている。Rustの安全性とパフォーマンスを活かし、従来のツールの限界を超えた革新的なアプローチを採用。現在はアルファ版だが、活発な開発とコミュニティサポートにより、将来性の高いプロジェクトである。17,000以上のスターが示すように、技術コミュニティから大きな期待と支持を得ている。