GraphiteEditor/Graphite
主な特徴
- 完全に非破壊的な編集ワークフロー
- レイヤーベースとノードベースのハイブリッド編集
- WebAssemblyによるブラウザでのネイティブに近いパフォーマンス
- GPU加速レンダリング(Velloレンダラー使用)
- プロシージャルデザインによる無限のスケーラビリティ
- オープンソースで100%コミュニティ主導の開発
リポジトリ解析: GraphiteEditor/Graphite
基本情報
- リポジトリ名: GraphiteEditor/Graphite
- 主要言語: Rust
- スター数: 16,349
- フォーク数: 716
- 最終更新: 現在も活発に開発中
- ライセンス: Apache License 2.0
- トピックス: グラフィックスエディタ、ベクターグラフィックス、ラスターグラフィックス、ノードベース、手続き型デザイン
概要
一言で言うと
オープンソースの2Dグラフィックスエディタで、レイヤーベースの構成とノードベースの生成的デザインを組み合わせた、完全に非破壊的な編集ワークフローを提供する革新的なツール。
詳細説明
Graphiteは、従来のグラフィックスアプリケーションよりもゲームエンジンに近い設計で構築された、汎用的なオールインワングラフィックスツールボックスです。当初はベクターエディタとして開発が始まりましたが、現在はベクター、ラスター、そしてそれ以上の機能を提供する総合的なツールへと進化しています。エディタのツールはノードグラフコアをラップしており、ユーザーフレンドリーなワークフローを提供します。
現在はアルファ版として、ウェブブラウザで動作するバージョンが公開されており、2025年にはデスクトップアプリケーションもリリース予定です。写真編集、モーショングラフィックス、デジタルペインティング、デスクトップパブリッシング、VFXコンポジティングなどの機能も計画されています。
主な特徴
- 完全に非破壊的な編集ワークフロー
- レイヤーベースとノードベースのハイブリッド編集
- WebAssemblyによるブラウザでのネイティブに近いパフォーマンス
- GPU加速レンダリング(Velloレンダラー使用)
- プロシージャルデザインによる無限のスケーラビリティ
- オープンソースで100%コミュニティ主導の開発
使用方法
インストール
前提条件
ウェブ版(最も簡単)
- 最新のウェブブラウザのみ必要
開発環境
- Node.js(最新LTS版)
- Rust(最新安定版)
- Git
インストール手順
# 方法1: ウェブ版を使用
# https://editor.graphite.rs にアクセスするだけ
# 方法2: ローカル開発環境の構築
git clone https://github.com/GraphiteEditor/Graphite.git
cd Graphite
# Rust開発ツールのインストール
cargo install cargo-watch
cargo install wasm-pack
cargo install -f wasm-bindgen-cli@0.2.100
# 開発サーバーの起動
npm start
# http://localhost:8080 でアクセス可能
基本的な使い方
Hello World相当の例
// ウェブエディタで新規ドキュメントを開く
// 1. レクタングルツールを選択
// 2. キャンバスにドラッグして四角形を描画
// 3. レイヤーパネルで図形を選択
// 4. プロパティパネルで色や変形を調整
実践的な使用例
// ノードベースのプロシージャルデザイン
// 1. 図形を作成
// 2. ノードビューに切り替え(ボタンクリック)
// 3. Scatter nodeを追加して図形を複製
// 4. パラメータを調整してパターンを生成
// 5. リアルタイムで結果を確認
高度な使い方
デモアートワークファイル(demo-artwork/ディレクトリ)から学習:
painted-dreams.graphite
- ブール演算とプロシージャルパターンmarbled-mandelbrot.graphite
- フラクタル生成procedural-string-lights.graphite
- プロシージャルライティングisometric-fountain.graphite
- ノードグラフの実例
ドキュメント・リソース
公式ドキュメント
- README.md: プロジェクト概要とミッション
- ウェブサイト: https://graphite.rs/ - 詳細な情報とチュートリアル
- ユーザーマニュアル: https://graphite.rs/learn/
- 機能一覧: https://graphite.rs/features/
サンプル・デモ
- demo-artwork/: 8つの高品質なデモファイル
- 各ファイルは異なる技術やワークフローを実演
- エディタで直接開いて学習可能
チュートリアル・ガイド
- YouTubeチュートリアル(Video ID: 7gjUhl_3X10)
- Discordコミュニティ(https://discord.graphite.rs)でのサポート
- ブログでの進捗報告と技術解説
技術的詳細
アーキテクチャ
全体構造
メッセージ駆動型のノードベースアーキテクチャを採用。エディタロジック(Rust)、フロントエンドUI(Svelte/TypeScript)、計算エンジン(ノードグラフシステム)が明確に分離されています。
ディレクトリ構成
project-root/
├── editor/ # エディタコアロジック(Rust)
│ ├── src/ # メインエディタコード
│ │ ├── messages/ # メッセージシステム
│ │ └── consts.rs # 設定定数
├── frontend/ # フロントエンドUI(Svelte)
│ ├── src/ # UIコンポーネント
│ └── wasm/ # WASM バインディング
├── node-graph/ # ノードグラフエンジン
│ ├── gcore/ # コアノードシステム
│ ├── graph-craft/ # ノードグラフコンパイル
│ ├── gstd/ # 標準ノードライブラリ
│ └── wgpu-executor/ # GPU実行エンジン
└── libraries/ # カスタムユーティリティ
├── bezier-rs/ # ベジェ曲線演算
└── path-bool/ # パスのブール演算
主要コンポーネント
-
Editor(editor/src/application.rs): アプリケーション全体の状態管理
- 場所:
editor/src/application.rs
- 依存: Dispatcher、MessageSystem
- インターフェース: Editor構造体のメソッド群
- 場所:
-
Dispatcher(editor/src/dispatcher.rs): 中央メッセージルーティング
- 場所:
editor/src/dispatcher.rs
- 依存: 各種メッセージハンドラ
- インターフェース: process_message、handle_message
- 場所:
-
NodeGraph(node-graph/): 計算エンジン
- 場所:
node-graph/gcore/src/
- 依存: 各種ノード実装
- インターフェース: Node trait、eval メソッド
- 場所:
技術スタック
コア技術
- 言語: Rust 2021 edition(システムプログラミング)
- フレームワーク:
- Svelte(リアクティブUI)
- wasm-bindgen(WASM統合)
- 主要ライブラリ:
- wgpu(GPU演算): GPU加速レンダリング
- vello(レンダリング): 高性能ベクターグラフィックス
- glam(数学): SIMD最適化された数学演算
- tokio(非同期): 非同期実行ランタイム
開発・運用ツール
- ビルドツール: Cargo(Rust)、Vite(フロントエンド)
- テスト: Criterionベンチマーク、単体テスト
- CI/CD: GitHub Actions(複数のワークフロー)
- デプロイ: Vercel(ウェブ版)、Tauri(デスクトップ版予定)
設計パターン・手法
- メッセージ駆動アーキテクチャ(すべての状態変更はメッセージ経由)
- ノードベース計算(型安全なコンパイル時型チェック)
- WASM Bridge パターン(JavaScript-Rust通信)
- 非破壊的編集(すべての操作が可逆)
データフロー・処理フロー
- ユーザー入力 → フロントエンドがイベントキャプチャ
- JavaScript → WASM EditorHandleにメッセージ送信
- EditorHandle → Rustバックエンドにディスパッチ
- Dispatcher → 適切なハンドラにルーティング
- メッセージハンドラ → 状態更新と応答生成
- ノードグラフ → 必要に応じて計算実行
- 応答 → FrontendMessageとしてJavaScriptに返送
- UI更新 → Svelteコンポーネントが状態変更に反応
API・インターフェース
公開API
WASM API(50以上のメソッド)
- ドキュメント操作:
openDocument()
,closeDocumentWithConfirmation()
- レイヤー操作:
selectLayer()
,moveLayerInTree()
,setLayerName()
- キャンバス操作:
panCanvas()
,zoomCanvasToFitAll()
- 入力処理:
onMouseMove()
,onKeyDown()
,onWheelScroll()
- ノードグラフ:
createNode()
,mergeSelectedNodes()
設定・カスタマイズ
設定ファイル
// ユーザー設定の例
{
"selection_mode": "Touched", // Touched/Enclosed/Directional
"zoom_with_scroll": true,
"use_vello": true, // GPU レンダリング
"vector_meshes": false,
"viewport_zoom_wheel_rate": 1.2
}
拡張・プラグイン開発
- ノード登録システム(NODE_REGISTRY経由)
- カスタムノード作成(Node trait実装)
- ツール拡張(Tool trait実装)
- ウィジェット拡張(カスタムUIコンポーネント)
パフォーマンス・スケーラビリティ
パフォーマンス特性
- ベンチマーク結果: Criterionによる包括的なベンチマーク
- 最適化手法:
- SIMD最適化(glamライブラリ)
- GPU加速(wgpu)
- Thin LTO(リリースビルド)
スケーラビリティ
- 無限キャンバス(仮想座標系)
- プロシージャル生成による無限の詳細度
- 非同期実行モデル
制限事項
- 現在アルファ版(API変更の可能性)
- ブラウザメモリ制限
- 一部機能は開発中
評価・所感
技術的評価
強み
- 革新的なノードベース×レイヤーベースのハイブリッドアーキテクチャ
- 高品質なコードベース(モジュラー設計、型安全性)
- GPU加速による高パフォーマンス
- 完全に非破壊的なワークフロー
- 活発な開発とコミュニティ
改善の余地
- アルファ版のため安定性に課題
- ドキュメントの自動生成設定が不足
- Clippyワークフローが無効化されている
- 統合テストスイートの不足
向いている用途
- プロシージャルデザインやジェネラティブアート
- ベクターグラフィックスの作成と編集
- 実験的なグラフィックワークフロー
- 教育・学習用途(ノードベース概念の理解)
向いていない用途
- プロダクション環境での重要なワークフロー(現時点)
- 大規模な商用プロジェクト(安定版待ち推奨)
- 従来型のラスター画像編集(まだ開発中)
総評
Graphiteは、グラフィックスエディタの分野に革新をもたらす野心的なプロジェクトです。ノードベースとレイヤーベースを融合させたアーキテクチャは独創的で、技術的にも高度な実装がなされています。Rustによる堅牢な基盤、GPU加速、WASM統合など、モダンな技術スタックを効果的に活用しています。
現在はアルファ版のため本番環境での使用には注意が必要ですが、その革新性と将来性は非常に高く、グラフィックスツールの新しい標準となる可能性を秘めています。特に、プロシージャルデザインやジェネラティブアートの分野で大きな価値を提供できるでしょう。