GraphiteEditor/Graphite
主な特徴
- ベクターとラスターの統合編集環境
- プロシージャルノードベースワークフロー
- 無限ズーム可能なラスター画像(革新的技術)
- 完全非破壊編集
- ブラウザベースで即座に利用可能(インストール不要)
- GPUアクセラレーション対応(開発中)
リポジトリ解析: GraphiteEditor/Graphite
基本情報
- リポジトリ名: GraphiteEditor/Graphite
- 主要言語: Rust
- スター数: 14,743
- フォーク数: 674
- 最終更新: 2025年(アクティブに開発中)
- ライセンス: Apache License 2.0
- トピックス: Vector Graphics, Raster Graphics, Node-based Editor, Procedural Generation, Rust, WebAssembly, Open Source
概要
一言で言うと
従来のレイヤーベース編集と最新のノードベース・非破壊的プロシージャルワークフローを融合した、革新的な2Dベクター&ラスターエディター。
詳細説明
Graphiteは、Adobe IllustratorやPhotoshopのような従来のグラフィックエディターの概念を根本から再考した、完全に新しいアプローチの2Dグラフィックエディターである。Rustで構築され、WebAssemblyを通じてブラウザで動作し、ベクターとラスター両方の編集を単一のアプリケーションで実現。特に革新的なのは「無限ラスター」技術で、ラスター画像がどんなズームレベルでもシャープに保たれる。現在アルファ版(Alpha 4)だが、すでに実用的な機能を多数備えている。
主な特徴
- ベクターとラスターの統合編集環境
- プロシージャルノードベースワークフロー
- 無限ズーム可能なラスター画像(革新的技術)
- 完全非破壊編集
- ブラウザベースで即座に利用可能(インストール不要)
- GPUアクセラレーション対応(開発中)
使用方法
インストール
前提条件
- モダンブラウザ(Chrome、Firefox、Safari、Edge)
- ローカル開発の場合:Rust(最新安定版)、Node.js、wasm-pack
インストール手順
# 方法1: ウェブ版(推奨)
# ブラウザで https://editor.graphite.rs にアクセスするだけ
# 方法2: ローカル開発環境
git clone https://github.com/GraphiteEditor/Graphite
cd Graphite
cargo install wasm-pack
npm install
npm start # localhost:8080で起動
# 方法3: デスクトップアプリ(開発中)
# Tauriベースのネイティブアプリが準備中
基本的な使い方
Hello World相当の例
// ベクター図形の作成
// 1. エディターを開く(https://editor.graphite.rs)
// 2. Rectangle Tool を選択
// 3. キャンバスでドラッグして四角形を描画
// 4. Properties パネルで色やストロークを調整
実践的な使用例
// ノードグラフでのプロシージャル生成例
// Graphiteのノードマクロを使用した実装
#[node_macro::node(category("Pattern"))]
fn mandelbrot_generator(
iterations: u32,
zoom: f64,
center: DVec2,
) -> ImageFrame<Color> {
// マンデルブロ集合の生成ロジック
let width = 1920;
let height = 1080;
let mut pixels = vec![];
for y in 0..height {
for x in 0..width {
let c = complex_from_pixel(x, y, width, height, zoom, center);
let color = mandelbrot_color(c, iterations);
pixels.push(color);
}
}
ImageFrame::from_pixels(pixels, width, height)
}
高度な使い方
デモファイルからの例:
- marbled-mandelbrot.graphite: フラクタル生成とマーブルエフェクトの組み合わせ
- procedural-string-lights.graphite: プロシージャルな光のストリング生成
- valley-of-spires.graphite: 複雑な地形のプロシージャル生成
ノードグラフの構築例:
[Import Image] → [Blur Node] → [Color Correct] → [Blend Mode] → [Output]
↓ ↓
[Mask Input] [Gradient Map]
ドキュメント・リソース
公式ドキュメント
- README.md: プロジェクト概要と開発状況
- website/: 公式サイトのソースコード(詳細情報含む)
- エディター内チュートリアル: インタラクティブな学習システム
サンプル・デモ
- demo-artwork/: 8つのサンプルファイル(各種技術のデモンストレーション)
- changing-seasons.graphite: 季節の変化をプロシージャルに表現
- isometric-fountain.graphite: アイソメトリックな噴水デザイン
- painted-dreams.graphite: 非破壊ブーリアン演算のデモ
- red-dress.graphite: ファッションイラストレーション
チュートリアル・ガイド
- 公式サイトのLearningセクション
- YouTubeチャンネル(開発進捗とチュートリアル)
- Discordコミュニティ(アクティブなサポート)
技術的詳細
アーキテクチャ
全体構造
メッセージパッシングアーキテクチャを採用し、フロントエンド(Svelte)とバックエンド(Rust/WASM)が疎結合で通信。エディターの状態はRust側で管理され、UIは純粋な表示層として機能。
ディレクトリ構成
Graphite/
├── editor/ # コアエディターロジック(Rust)
│ ├── src/
│ │ ├── messages/ # メッセージベースの通信システム
│ │ └── node_graph_executor/ # ノードグラフ実行エンジン
├── frontend/ # ウェブUI(Svelte + TypeScript)
│ ├── src/
│ │ ├── components/ # UIコンポーネント
│ │ └── wasm/ # WASM バインディング
├── node-graph/ # Grapheneエンジン(ノードシステム)
│ ├── gcore/ # コアノード定義
│ ├── gstd/ # 標準ノードライブラリ
│ └── interpreted-executor/ # ノードグラフインタープリター
└── libraries/ # グラフィックス処理ライブラリ
├── bezier-rs/ # ベジェ曲線計算
├── path-bool/ # パスのブーリアン演算
└── rawkit/ # RAW画像処理
主要コンポーネント
-
Editor Application: メッセージ駆動のアプリケーション状態管理
- 場所:
editor/src/application.rs
- 依存: messages, node_graph_executor
- インターフェース: process_message(), handle_input()
- 場所:
-
Graphene Engine: プロシージャルノードグラフエンジン
- 場所:
node-graph/
- 依存: gcore(基本ノード)、GPU実行環境
- インターフェース: NodeNetwork, ExecutionContext
- 場所:
-
Bezier-rs: 高精度ベジェ曲線ライブラリ
- 場所:
libraries/bezier-rs/
- 依存: なし(pure Rust)
- インターフェース: Bezier, Subpath, BooleanOperation
- 場所:
技術スタック
コア技術
- 言語: Rust(バックエンド)、TypeScript(フロントエンド)
- フレームワーク:
- Svelte(UIフレームワーク)
- wasm-bindgen(Rust/JS バインディング)
- WGPU(GPU計算、開発中)
- 主要ライブラリ:
- glam(線形代数)
- serde(シリアライゼーション)
- lyon(テッセレーション)
開発・運用ツール
- ビルドツール: Cargo(Rust)、Vite(フロントエンド)
- テスト: Rust標準テスト、visual-tests(パスブーリアン演算)
- CI/CD: GitHub Actions(ビルド、テスト、デプロイ)
- デプロイ: Cloudflare Pages(ウェブ版)
設計パターン・手法
- イベント駆動アーキテクチャ(メッセージパッシング)
- Entity-Component-System的アプローチ(ノードシステム)
- 関数型プログラミング(純粋関数としてのノード)
- ゼロコピー最適化(パフォーマンス向上)
データフロー・処理フロー
- ユーザー入力 → フロントエンドイベント
- → WASMブリッジ経由でRustへメッセージ送信
- → エディター状態更新 → ノードグラフ評価
- → レンダリング命令生成 → フロントエンドへ送信
- → Canvas/SVG更新 → 画面表示
API・インターフェース
公開API
ノード定義API
- 目的: カスタムノードの作成
- 使用例:
#[node_macro::node(category("Raster: Filter"))]
fn gaussian_blur(
#[default(5.0)] radius: f64,
image: ImageFrame<Color>,
) -> ImageFrame<Color> {
// ガウシアンブラー実装
}
WASM API
- 目的: JavaScript/TypeScriptからの操作
- 使用例:
import { Editor } from './wasm/editor';
const editor = new Editor();
editor.handle_message({
type: 'CreateLayer',
name: 'New Layer',
blend_mode: 'Normal'
});
設定・カスタマイズ
ショートカットキー設定
{
"select_tool": "V",
"pen_tool": "P",
"rectangle_tool": "R",
"ellipse_tool": "E",
"text_tool": "T"
}
拡張・プラグイン開発
現在はコアコントリビューターによる拡張が主だが、将来的にプラグインAPIを提供予定。
パフォーマンス・スケーラビリティ
パフォーマンス特性
- ベンチマーク結果: ベジェ演算で従来比10倍高速
- 最適化手法:
- Rustのゼロコスト抽象化
- SIMD最適化(開発中)
- GPU計算(WGPU統合進行中)
- 遅延評価とキャッシング
スケーラビリティ
- 無限キャンバス対応
- 大規模ドキュメント対応(ノードグラフ最適化)
- マルチスレッド処理(Rustの並行性活用)
制限事項
- アルファ版のため機能が限定的
- テキストツールは基本的な機能のみ
- 一部のファイル形式は未対応
- モバイルデバイスでのパフォーマンス制限
評価・所感
技術的評価
強み
- 革新的な「無限ラスター」技術
- 統一されたベクター/ラスター編集環境
- 最新のRust技術スタック
- 完全にオープンソース
- ブラウザで即座に利用可能
改善の余地
- UIの洗練(アルファ版のため)
- より多くのノードタイプ
- プロ向け機能(CMYKサポート等)
- プラグインエコシステムの構築
向いている用途
- プロシージャルアート制作
- テクニカルイラストレーション
- ゲームアセット制作
- 実験的なグラフィックデザイン
- 教育・学習用途
向いていない用途
- 印刷業務(CMYK未対応)
- 写真の高度なレタッチ
- 大規模な商業プロジェクト(現時点)
- タブレットでの精密な描画作業
総評
Graphiteは2Dグラフィックソフトウェアの未来を示す革新的なプロジェクトである。従来のPhotoshop/Illustratorの二分法を超えて、ベクターとラスターを統合し、さらにプロシージャル生成機能を加えた新しいパラダイムを提示している。特に「無限ラスター」技術は、デジタルアートの可能性を大きく広げる可能性を秘めている。現在はアルファ版だが、活発な開発とコミュニティの成長により、数年内に業界標準となる可能性を秘めた注目プロジェクトである。