GraphiteEditor/Graphite
主な特徴
- ハイブリッド編集:レイヤーとノードの統合
- 統一されたラスター&ベクターサポート
- プロシージャルグラフィックスエンジン(Graphene)
- 解像度非依存のレンダリング
- Webベースでインストール不要
- GPU アクセラレーション(開発中)
- 100%コミュニティ駆動の開発
リポジトリ解析: GraphiteEditor/Graphite
基本情報
- リポジトリ名: GraphiteEditor/Graphite
- 主要言語: Rust
- スター数: 13,845
- フォーク数: 641
- 最終更新: 活発に更新中
- ライセンス: Apache License 2.0
- トピックス: graphics-editor, vector-graphics, procedural-graphics, rust, webassembly, node-based
概要
一言で言うと
Graphiteは、従来のレイヤーベースの編集と最新のノードベースの非破壊的なプロシージャルワークフローを融合した、革新的な2Dベクター&ラスターエディタです。
詳細説明
Graphiteは、すべてのアーティストとプロフェッショナルの創造性を解き放つことを使命とする、無料でオープンソースの2Dグラフィックスエンジンです。現在アルファ版として、Webベースのエディタ(editor.graphite.rs)で利用可能です。このプロジェクトは、従来のクリエイティブアプリというよりもゲームエンジンのように構築されており、2Dコンテンツ作成のためのプロシージャルツールボックスとして位置づけられています。
Adobe Creative SuiteやAffinity Designerなどの高価なツールに対する無料の代替として開発されており、特に以下の革新的な特徴を持ちます:
- ラスター画像をどのスケールでもシャープに保つ革新的なレンダリング
- ベクターとラスターをシームレスに統合
- Rustで構築された高性能なGrapheneエンジン
- WebAssemblyによるブラウザでの実行
主な特徴
- ハイブリッド編集:レイヤーとノードの統合
- 統一されたラスター&ベクターサポート
- プロシージャルグラフィックスエンジン(Graphene)
- 解像度非依存のレンダリング
- Webベースでインストール不要
- GPU アクセラレーション(開発中)
- 100%コミュニティ駆動の開発
使用方法
インストール
前提条件
- Node.js(最新LTS版)
- Rust(最新安定版)
- Git
インストール手順
# 方法1: Webアプリケーション(最も簡単)
# ブラウザで直接アクセス:https://editor.graphite.rs
# 推奨ブラウザ:Chrome、Edge、Opera(Safariは限定的サポート)
# 方法2: ローカル開発環境
# リポジトリのクローン
git clone https://github.com/GraphiteEditor/Graphite.git
cd Graphite
# Rust開発ツールのインストール
cargo install cargo-watch
cargo install wasm-pack
cargo install -f wasm-bindgen-cli@0.2.100
# 開発サーバーの起動
npm start
# http://localhost:8080 でアクセス可能
# 方法3: デスクトップアプリケーション(実験的)
# Tauriを使用したデスクトップ版が開発中
基本的な使い方
Hello World相当の例
1. https://editor.graphite.rs にアクセス
2. 矩形ツールを選択(ツールバーから)
3. キャンバスにドラッグして矩形を描画
4. テキストツールを選択
5. "Hello World"と入力
6. File → Export でエクスポート
実践的な使用例
# ベクターイラストレーション
1. 基本シェイプ(矩形、楕円、多角形)で構成を作成
2. パスツールで形状を編集
3. ペンツールで有機的な形状を追加
4. グラデーションや色を適用
# プロシージャルデザイン
1. ビューポート右上のボタンでノードグラフを開く
2. "Circular Repeat"ノードを使用してオブジェクトを円形に複製
3. パラメータを調整してバリエーションを生成
4. ノードを接続して複雑なエフェクトを作成
高度な使い方
デモアートワークファイルを参考に:
changing-seasons.graphite
- パラメトリックアニメーションisometric-fountain.graphite
- アイソメトリックイラストレーションmarbled-mandelbrot.graphite
- フラクタルベースのアートprocedural-string-lights.graphite
- プロシージャル生成
ドキュメント・リソース
公式ドキュメント
- README.md: プロジェクト概要とセットアップ
- website/content/: ユーザーマニュアルと開発者ガイド
- Learn: https://graphite.rs/learn/ でチュートリアル
- Blog: 技術的な解説記事
サンプル・デモ
- demo-artwork/: 8つの高品質なデモファイル
- アイソメトリックフォンテン
- パラメトリックな砂丘
- プロシージャルなストリングライト
- その他アート作品
チュートリアル・ガイド
- 貢献者ガイド:
/volunteer/guide/
- ツール使用方法
- ノードグラフの基礎
- ベクター編集テクニック
技術的詳細
アーキテクチャ
全体構造
Graphiteは、メッセージ駆動アーキテクチャとノードベースの実行エンジンを組み合わせた独自の設計を採用。エディタはRustで書かれ、WebAssemblyにコンパイルされてブラウザで実行されます。
ディレクトリ構成
Graphite/
├── editor/ # コアアプリケーションロジック
│ └── src/
│ ├── dispatcher.rs # メッセージディスパッチャー
│ ├── messages/ # メッセージハンドラー
│ └── tools/ # ツール実装
├── node-graph/ # Grapheneエンジン
│ ├── gcore/ # コアタイプと機能
│ ├── gstd/ # 標準ノードライブラリ
│ ├── graph-craft/ # コンパイルと最適化
│ └── interpreted-executor/ # ランタイム実行
├── frontend/ # Web UI(Svelte)
│ ├── src/
│ └── wasm/ # WebAssemblyバインディング
├── libraries/ # 再利用可能なライブラリ
│ ├── bezier-rs/ # ベジェ曲線操作
│ └── path-bool/ # パスのブール演算
└── website/ # ドキュメントサイト
主要コンポーネント
-
Dispatcher: メッセージ駆動アーキテクチャの中核
- 場所:
editor/src/dispatcher.rs
- 階層的なメッセージキューシステム
- 遅延メッセージ最適化
- 場所:
-
Node Graph (Graphene): プロシージャルエンジン
- 場所:
node-graph/
- DocumentNode → ProtoNode → 実行可能ノード
- 自動重複排除とキャッシング
- 場所:
-
Frontend: SvelteベースのUI
- 場所:
frontend/src/
- TypeScriptとRustの統合
- レスポンシブデザイン
- 場所:
技術スタック
コア技術
- 言語: Rust(100%のコアコードベース)、TypeScript(UI)
- フレームワーク: Svelte(フロントエンド)
- レンダリング:
- wgpu(GPU レンダリング)
- vello(高性能ベクターレンダリング)
- resvg/usvg(SVG レンダリング)
開発・運用ツール
- ビルドツール: Cargo(Rust)、Vite(フロントエンド)
- テスト: Criterion.rs(ベンチマーク)、cargo test
- CI/CD: GitHub Actions、Cloudflare Pages
- デプロイ: WebAssembly、Tauri(デスクトップ版)
設計パターン・手法
- メッセージ駆動アーキテクチャ: すべての操作がメッセージとして処理
- ノードベースの実行: ビジュアルプログラミング環境
- 不変メッセージパッシング: 予測可能な状態遷移
- 遅延評価: 必要な部分のみ計算
データフロー・処理フロー
- ユーザー入力 → TypeScriptメッセージ
- WASM境界を越えてRustメッセージに変換
- Dispatcherがメッセージを適切なハンドラーにルーティング
- ノードグラフで処理(必要に応じて)
- レンダリング結果をフロントエンドに返送
API・インターフェース
公開API
エディタハンドル
- 目的: JavaScriptからの統合
- 使用例:
// WASMモジュールからエディタインスタンスを作成
const editor = await createEditor();
editor.dispatch(message);
ノード作成API
- 目的: カスタムノードの実装
- 使用例:
#[node_macro::node(category("Raster: Adjustments"))]
fn opacity(_input: (), color: Color, opacity_multiplier: f64) -> Color {
color.with_alpha(color.a() * opacity_multiplier)
}
設定・カスタマイズ
設定ファイル
現在、設定はUIを通じて行われ、ローカルストレージに保存されます。
拡張・プラグイン開発
- カスタムノードの追加(node_macro使用)
- 新しいツールの実装(Tool トレイト実装)
- ウィジェットシステムによるUI拡張
パフォーマンス・スケーラビリティ
パフォーマンス特性
- 2024年に「ひどい」から「適切」なレベルに改善
- Velloレンダラー統合によるGPU高速化(オプトイン)
- WebAssemblyによる効率的な実行
- ノードの自動重複排除
スケーラビリティ
- 並列ノード実行(独立したノード)
- インクリメンタル更新
- メモリ効率的な借用ベースの実行
制限事項
- 高ピクセル数での既知のボトルネック
- 複雑なベクター操作でのパフォーマンス問題
- アルファ版のため安定性に課題
評価・所感
技術的評価
強み
- 革新的なハイブリッドワークフロー
- 強力な技術基盤(Rust + WebAssembly)
- 活発な開発とコミュニティ
- 明確なビジョンとロードマップ
- 100%オープンソース
改善の余地
- アルファ版の安定性
- 限定的な機能セット
- パフォーマンスの最適化
- 包括的なテストインフラの不足
向いている用途
- シンプルなベクターアートワーク
- プロシージャルアート実験
- 教育目的
- オープンソースプロジェクトのグラフィック
向いていない用途
- プロフェッショナルな印刷制作
- 複雑なイラストレーション
- 写真編集ワークフロー
- 商用デザイン作業(現時点)
総評
Graphiteは、2Dグラフィックス編集への革新的なアプローチを提示する野心的なプロジェクトです。レイヤーベースとノードベースの編集を統合し、ベクターとラスターをシームレスに扱い、解像度に依存しないレンダリングを実現するなど、既存のツールにはない独自の価値を提供しています。
現在はアルファ版で本番環境での使用には適していませんが、活発な開発、成長するコミュニティ、Google Summer of Codeへの参加など、将来性は非常に高いです。特に、Adobe製品の高額なサブスクリプションに代わる無料のオープンソース代替品として、また、3D業界で一般的なノードベースのワークフローを2Dに持ち込む先駆者として注目を集めています。
技術的には、Rust + WebAssemblyという最新のスタックを採用し、パフォーマンスと移植性を両立させている点が評価できます。今後、デスクトップアプリのリリース、アニメーション機能の追加、GPU高速化の完全実装などが予定されており、数年以内に本格的な制作ツールとして使用可能になることが期待されます。