microsoft/edit
主な特徴
- モードレスな対話型エディタ(vimのようなモード切り替えが不要)
- Unicode対応のテキスト処理
- 即座モード(immediate mode)UIフレームワーク採用
リポジトリ解析: microsoft/edit
基本情報
- リポジトリ名: microsoft/edit
- 主要言語: Rust
- スター数: 10,840
- フォーク数: 467
- 最終更新: 最近(READMEに最新情報あり)
- ライセンス: MIT License
- トピックス: テキストエディタ、ターミナルアプリケーション
概要
一言で言うと
MS-DOSエディタにインスパイアされた、モダンなターミナルベースのシンプルなテキストエディタ
詳細説明
Microsoft製の「Edit」は、クラシックなMS-DOSエディタへのオマージュとして開発されたテキストエディタです。ターミナル環境に不慣れなユーザーでも簡単に使えるアクセシブルなエディタを提供することを目標としており、VS Codeのような現代的なインターフェースと入力コントロールを備えています。Rustで実装されており、高性能かつ軽量なバイナリを提供します。
主な特徴
- モードレスな対話型エディタ(vimのようなモード切り替えが不要)
- Unicode対応のテキスト処理
- 即座モード(immediate mode)UIフレームワーク採用
使用方法
インストール
前提条件
- Rust(nightly toolchain推奨)
- Windows: Visual C++ビルドツール
- Linux/macOS: 標準的な開発ツール
インストール手順
# 方法1: パッケージマネージャー経由
# Windows (WinGet)
winget install Microsoft.Edit
# 方法2: ソースからビルド
# Rustをインストール
curl --proto '=https' --tlsv1.2 -sSf https://sh.rustup.rs | sh
# nightlyツールチェインをインストール
rustup install nightly
# リポジトリをクローン
git clone https://github.com/microsoft/edit.git
cd edit
# リリースビルド
cargo build --config .cargo/release.toml --release
基本的な使い方
Hello World相当の例
# ファイルを開く
edit myfile.txt
# 特定の行・列で開く
edit myfile.txt:123:45
実践的な使用例
# 新規ファイルを作成して編集
edit newfile.txt
# 既存ファイルを編集
edit README.md
# ヘルプを表示
edit --help
高度な使い方
エディタ内での操作:
Alt-F
: メニューにアクセス- 標準的なキーボードショートカット(Ctrl+C/V/X など)
- マウス操作対応
ドキュメント・リソース
公式ドキュメント
- README.md: プロジェクトの概要、インストール方法、ビルド手順
- manpage (edit.1): Unixスタイルのマニュアルページ
- Wiki/サイト: https://github.com/microsoft/edit
サンプル・デモ
- assets/editing-traces/: エディタの編集トレースデータ(ベンチマーク用)
- benches/lib.rs: パフォーマンステスト用の実装例
チュートリアル・ガイド
基本的な使い方はシンプルなため、特別なチュートリアルは提供されていませんが、manページとREADMEで十分な情報が得られます。
技術的詳細
アーキテクチャ
全体構造
モジュール化されたRustアプリケーションで、以下の主要コンポーネントで構成:
- tui: 即座モード(immediate mode)UIフレームワーク
- buffer: ギャップバッファベースのテキストバッファ実装
- unicode: Unicode対応のテキスト処理
- sys: プラットフォーム固有の機能(Unix/Windows)
ディレクトリ構成
project-root/
├── src/ # メインソースコード
│ ├── arena/ # メモリアリーナアロケータ
│ ├── buffer/ # テキストバッファ実装(ギャップバッファ)
│ ├── simd/ # SIMD最適化されたユーティリティ
│ ├── sys/ # OS固有の実装
│ ├── unicode/ # Unicode処理
│ └── bin/edit/ # メインアプリケーション
├── assets/ # アイコン、マニュアル等のリソース
├── benches/ # ベンチマークコード
└── tools/ # 開発ツール
主要コンポーネント
-
TextBuffer: テキスト編集の中核となるギャップバッファ実装
- 場所:
src/buffer/mod.rs
- 依存: arena, unicode, simd
- インターフェース: cursor_move_to_offset, write_raw, delete
- 場所:
-
Tui (Terminal UI): 即座モードUIフレームワーク
- 場所:
src/tui.rs
- 依存: framebuffer, input, vt
- インターフェース: block_begin/end, button, render
- 場所:
-
Arena Allocator: 高速メモリ管理
- 場所:
src/arena/mod.rs
- 依存: なし
- インターフェース: alloc, reset
- 場所:
技術スタック
コア技術
- 言語: Rust (Edition 2024, nightly features使用)
- フレームワーク: カスタム即座モードUIフレームワーク
- 主要ライブラリ:
- libc (0.2): Unix系システムコール
- windows-sys (0.59): Windows API
開発・運用ツール
- ビルドツール: Cargo(高度な最適化設定)
- テスト: cargo test(ICU統合テスト含む)
- CI/CD: GitHub Actions(推測)
- デプロイ: バイナリ配布、パッケージマネージャー
設計パターン・手法
- 即座モード(Immediate Mode)UI設計
- ギャップバッファによる効率的なテキスト編集
- アリーナアロケータによるメモリ管理最適化
- SIMD命令による文字列処理の高速化
データフロー・処理フロー
- ユーザー入力 → input::Parser
- UIイベント処理 → tui::Context
- テキスト編集 → buffer::TextBuffer
- 描画 → framebuffer → VTエスケープシーケンス出力
API・インターフェース
公開API
ライブラリとしても使用可能:
use edit::buffer::TextBuffer;
use edit::tui::Tui;
// テキストバッファの作成
let mut tb = TextBuffer::new(false).unwrap();
tb.write_raw(b"Hello, World!");
設定・カスタマイズ
設定ファイル
設定ファイルは提供されていません(シンプルさを重視)
拡張・プラグイン開発
現在プラグインシステムは実装されていませんが、将来的にC ABIを通じた拡張が計画されています。
パフォーマンス・スケーラビリティ
パフォーマンス特性
- ベンチマーク結果: 高速なテキスト編集操作
- 最適化手法:
- SIMD命令による文字列検索
- アリーナアロケータ
- opt-level = "s"による実行ファイルサイズ最適化
スケーラビリティ
- メモリ使用量は編集するファイルサイズに比例
- 大規模ファイルでも高速な操作が可能
制限事項
- プラグインシステム未実装
- 構文ハイライト未対応
- 分割ウィンドウ未対応
評価・所感
技術的評価
強み
- 軽量で高速な実行ファイル(strip後のサイズが小さい)
- モダンなRustによる安全性とパフォーマンスの両立
- シンプルで使いやすいインターフェース
改善の余地
- 高度な編集機能(構文ハイライト、自動補完等)の不足
- プラグインシステムの実装
向いている用途
- サーバー上での設定ファイル編集
- ターミナル初心者向けのテキスト編集
- 軽量なテキストエディタが必要な環境
向いていない用途
- プログラミング向けの高度な編集機能が必要な場合
- 大規模なコードベースの編集
総評
Microsoft製の「Edit」は、シンプルさとアクセシビリティを重視した優れたターミナルテキストエディタです。MS-DOSエディタの懐かしさとモダンな実装の融合により、初心者から上級者まで幅広いユーザーに適しています。Rustによる実装は高品質で、将来的な拡張性も期待できます。